最後に、テクノロジーインパクトに参加するNPO2団体を紹介する。
MASS Design Groupは、建築物のデザインや建設を通じて開発途上国を支援している。同団体は3次元設計ツールやビジュアライゼーションを活用している。
この団体が設計したルワンダの貧しい地域にあるbutaro病院は、ウイルスの空気感染のリスクを減らした構造や、入院患者の治癒力を高めるためのデザインとなっている。
建築の際には、地元の火山岩などの資材を活用し、設計や作業に当たる人材も地元で登用した。併せて、地元の建築家教育も行った。このように、単なる経済援助や物資支援ではなく、地域を根元から元気にするための振興に取り組んでいる。
D-Rev(Design Revolution)は、開発途上国の1日4ドル未満で生活する人々を対象に医療器具を提供している。全世界で、戦争や事故などで脚を切断した人の8割は義足を購入できず、不自由な生活を強いられている。同団体は、そうした人に向けて義足を提供している。
同団体は、オートバイの事故で左足を失ったインド人のカマル君という少年に「JaipurKnee」という膝用ジョイントの付いた義足を提供した。
その後のカマル君は、日常生活における歩行の問題が解消し、就職することができた。以前は、歩行の際に竹製のつえを使っており、健康状態にも問題が出ていた。個人の足によくフィットする形状をしたジョイントを製作するために、3次元CADが有効活用されている。
「グローバルな社会というのは、解決が非常に困難で、かつ複雑に入り組んだEpic Charange(壮大な課題)に直面している。例えば環境問題は、気候変動、保健衛生、水源、都市化などさまざまな問題に取り組まなくてはならない。そのような問題を解決しようと思う時、デザインの果たす役割は非常に大きい」(Cameron氏)。
今日の技術を使って壮大な課題を乗り越えるための原則として、Cameron氏は以下の3つの原則を挙げた。
3次元データにより、局所の設計や意思決定がシステム全体にどう影響を及ぼすか理解できるようになり、コンピュータ上でシミュレーションが迅速に重ねられ、設計者に限らずさまざまな人がモノづくりのプロセスに関与できるということだ。これは、従来の技術では到底不可能だったことで、今日のコンピュータやネットワーク技術の発展によってかなえられている。
ただし、結局は「デザイナーの気持ちが一番大事」とCameron氏は補足した。「自分の知識を生かして壮大な課題にチャレンジしようという気持ちを大事にしたい。そういった人たちを支援することで、よりよい世界づくりに貢献したい」(Cameron氏)。
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