中小サプライヤを対象に、ISO 26262に取り組む上での実践的な施策について紹介する本連載。第4回は、第3回で基礎を解説した「プロセス実装」のうち、Part2の機能安全管理プロセスについて掘り下げる。Part4〜6のエンジニアリングプロセスについても、ティア1サプライヤの取るべき対策を紹介しよう。
前回は、「プロセスの実装」というテーマで、中小サプライヤが構築すべきプロセスを、主にDIA(開発インタフェース協定)という切り口からプロセスの概観(全体像)を議論しました。
まず、このプロセスをおさらいしましょう。
表1は、Part8の分散開発インタフェースの要求に基づいて導き出したものですから、現実の製品開発に適用するプロセスを作る場合には十分ではありません。具体的なイメージを作るためには、各Partの要求項目レベルまで掘り下げる必要があります。
DIAで合意すべきこと | 機能安全に必要なプロセス | 関連する規格条項 |
---|---|---|
入力情報 | 製品開発プロセス(機能仕様書、安全目標、安全要求などの入力となる成果物規定) | Part4/Part5/Part6 |
安全管理者の任命/計画立案 | 安全管理プロセス(安全管理者任命、安全計画の立案、テーラリング基準など作業開始時の作業や責任・権限に関する規定) | Part2:6節 |
テーラリング結果 | 製品開発プロセス(安全要求、設計、テスト、安全分析などエンジニアリング関係の作業規定 | Part4/Part5/Part6 |
やりとりする成果物 | 構成管理・文書管理プロセス(成果物の管理と配布など成果物や文書・記録などの版管理やリリースに関する規定) | Part2:6.4.6/Part8:7節と10節 |
進捗状況の報告 | 安全管理プロセス(進捗管理、問題管理、エスカレーションなどのプロジェクト管理規定/アノマリの報告 | Part2:5節と6節 |
変更発生時の対応 | 変更管理プロセス(影響分析、変更時の承認・報告) | Part8:8節 |
機能安全監査の実施 | 機能安全監査(監査計画、実施要領、監査報告) | Part2:6.4.8 |
機能安全アセスメントの実施 | 機能安全アセスメント(アセスメント範囲、役割分担(顧客・自社)) | Part2:6.4.9/Part4:10節 |
生産時の対応 | 生産管理プロセス | Part7 |
表1 DIAから見た必要な機能安全プロセス |
一般論として、自社の責任範囲(開発範囲)や対象製品のASILが何であろうと、Part2やPart8の大部分は対象範囲と考えてよいと思います。つまり、自社の機能安全プロセスを構築する際には必ず取り込まなければならない要求ということになります。
一方、製品開発プロセスであるPart4〜6と、生産プロセスであるPart7は、自社が何を担当するのかによって、取り込まなければならない要求は変わってきます。今回はこの点を踏まえて、Part2とPart8は網羅的に、Part4〜7は典型的なパターンを想定して、そこで対応しなければならない要求を絞り込んで議論したいと思います。
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