これらの“4つの波”の後押しにより、米国回帰の動きは着実に増えているものの「全ての企業が米国回帰を目指すような全体的なトレンドになっているとは言い難い」と吉田氏は話す。
「米国回帰一辺倒ではなくまだ中国など新興国に工場を移転させる動きも続いている。そのため全体的な統計数値を見ても、大きく米国内に産業が戻る動きが出ているかといえばそうではない。シェール革命関連の化学産業の動きはほぼ見えているが、その他の要素は動向次第で動く可能性がある」と吉田氏は慎重な見方を示す。
ただ、製造業の雇用者数を見てみると、1990年代後半から右肩下がりに下がってきていたのが、2010年以降少し回復の兆しを見せ始めていることは確かだ。
日本と同様、人件費やインフラコストの高い米国への製造業回帰の動きは、日本への製造業および生産拠点回帰が可能であることを示している。
“4つの波”を見てみると、シェール革命については日本では現状では望めない。また米国との違いで見ると人口が減少局面にあり、市場としての魅力が下がっていることはマイナス要因だ。ただ、他の3つのポイントを見ると日本にも十分に可能性があることが分かる。
国産EMSとして成長を続ける沖電気EMS事業本部の清水光一郎氏は「人件費だけを考えて安いところを探し求める発想はあまりにも安易過ぎる。トータルコストを見ると新興国での生産は決して安くない場合が多い。また作業効率を革新的に高めることができれば十分日本でコスト競争力を発揮していける」と語っている(関連記事:進撃の国産EMS、沖電気が描く日本型モノづくりの逆襲)。
“アベノミクス”効果などはあるものの、グローバル競争の中で競り負ける製品が多く出る中、国内工場の統廃合や海外移転が進む流れはそれほど変わっていない(関連記事:海外流出は是か非か、進む日本のモノづくり空洞化)。しかし、日本よりはるかに早くに製造業の空洞化が指摘された米国で製造業回帰の動きが進む中、日本での生産が本当に不可能なのかどうか、もう一度考えてみるべき時なのではないだろうか。
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