ボルボ・カー・ジャパンは、2014年モデルの車両に、自動車と同じ方向を走行中の自転車を検知して追突を回避できる「サイクリスト検知機能」を導入すると発表した。
ボルボ・カー・ジャパンは2013年8月27日、東京都内で会見を開き、同日から発売する2014年モデルの車両(「XC90」を除く)に、自動車と同じ方向を走行中の自転車を検知して、追突を回避したり、追突による被害を軽減したりするための自動ブレーキを行う「サイクリスト検知機能」を導入すると発表した。
ボルボは、2006年のブレーキサポート機能付き追突警告機能の発表を皮切りに、2008年にはレーザーレーダーによる先行車両の検知と自動ブレーキによって追突を回避できる機能を備えた「City Safety」を投入。
2010年には、ミリ波レーダーと単眼の車載カメラを使って、より高速域でも先行車両との追突回避が可能で、歩行者も検知できる「Human Safety」を導入した(日本市場への導入は全て1年遅れ)。
今回発表したサイクリスト検知機能は、ほとんどのボルボ車に標準装備されているCity Safetyのレーザーレーダーと、Human Safetyのミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせて、自動車と同じ方向に走っている自転車を検知する。2輪車(バイク)の検知には対応していない。なお、Human Safetyは、オプション装備「セーフティ・パッケージ」の1機能となっている。同パッケージの価格は20万円だ。
従来のHuman Safetyで対応していた歩行者の場合は、長距離の検知に優れるミリ波レーダーと、物体の形状から対象物の種類を判別できる車載カメラ、2つのセンサーで検知していた。しかし自転車の場合は、路肩などを走行中に駐車中の車両などを避けるため、自動車の進路内に突然横から入ってきて衝突事故を起こすといったようなケースが多い。そこで、広範囲の検知に優れるレーザーレーダーも組み合わせることにしたようだ。
サイクリスト検知機能が動作する条件は以下の通り。検知可能な条件は、地上70cm以上の高さに後方反射板(リアリフレクター)を装備する大人用の自転車であり、サイクリスト検知機能を搭載する車両と同じ方向に走行しているとともに、真後ろから状態を車載カメラで捉える必要がある。また、機能搭載車両の速度が時速4〜80kmの間で作動する。
自車両の速度が時速50km未満で、自転車との相対速度が時速15km以下であれば、自動ブレーキによって追突を回避できる。相対速度が時速15km以上の場合は、追突被害を軽減する。
スウェーデン本社のVolvo Carのセーフティセンターでセーフティストラテジー&リクワイヤメンツ担当シニアマネージャーを務めるJan Ivarsson(ヤン・イバーソン)氏は、「サイクリスト検知機能の実現では、当社が40年にわたって独自に収集してきた交通事故の発生状況に関するデータベースが重要な役割を果たした。ハードウェアは、従来のCity SafetyやHuman Safetyとほぼ同じものを使用しており、先述のデータベースから構築した検知アルゴリズムなどソフトウェアの改良が中心となっている」と語る。
また、安全システムの機能拡張に関する今後の取り組みについては、「SUVのXC90をフルモデルチェンジする際に、エルク(ヘラジカ)などとの衝突事故を防ぐ動物検知機能と夜間に歩行者を検知するナイトビジョンを搭載する予定」(Ivarsson氏)だという。
今回の2014年モデルでは、サイクリスト検知機能以外でも安全システムの機能向上が図られている。まず、City Safetyについては、動作条件が自車両の速度が時速30km未満だったところを、時速50km未満に引き上げた。ただし、追突回避条件が時速15km以下という点は変わらない。
セーフティ・パッケージと「アクティブベンディング・デュアルキセノンヘッドライト」を装着する「S60」、「V60」、「XC60」であれば、「フル・アクティブ・ハイビーム」を利用できる。トヨタ自動車が「レクサスLS」で採用した「AHS(Adaptive Hi-beam System)」と同様に、車載カメラで検知した先行車や対向車の部分だけ遮光しながら、他の部分をハイビームで照射することで、前方車両を幻惑することなく自車の前方視界を確保する機能である(関連記事:新型「レクサスLS」は“止まる”プリクラッシュを搭載、進化型自動ハイビームも)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.