三菱重工業が、機能安全の国際規格「IEC 61508:2010(SIL3)」に準拠した制御システム「DIASYS Netmation 4S」を開発。発電所向け制御システムでIEC 61508:2010の認証取得は世界初だという。
三菱重工業(以下、三菱重工)は2013年8月27日、機能安全の国際規格「IEC 61508:2010(SIL3)」に準拠した制御システム「DIASYS Netmation 4S(ディアシス・ネットメーション・フォース)」を開発したと発表した。2014年春から出荷を開始する予定。IEC 61508:2010の認証は、国際的な第三者試験認証機関のテュフズードから取得している。
DIASYSシリーズは、1980年代から三菱重工製ガス/蒸気タービン、ボイラーなどの発電設備の他、多様なインフラ製品や産業設備に用いられている制御システム。
シリーズ最新機種となるDIASYS Netmation 4Sは、これまで専用制御システム内で独立させていた大型主要機器保護用の回路を一般的な制御用回路と共存可能として、約200種類の要素で演算回路を作ることができるのが特徴。演算部は最大4重化することができ、安全のみならず、高い稼働性と保守性を実現している。また、最大9万点の入出力信号を処理できる大容量性、最速1msecの高速処理を可能とする。
IEC 61508は、機能安全のベースともいえる国際規格で2000年に制定された。プラント、自動車、鉄道、航空機、ファクトリーオートメーションなどさまざまな分野に広がっており、ISO 26262もこれを基に制定されている。
今回、DIASYS Netmation 4Sが認証取得したIEC 61508:2010は、IEC 61508の第2版(2010年版)で、設計・開発に関するマネジメントシステム、ソフトウェアやセキュリティに関する要件が追加されたもの。規格の信頼性を指標化したSIL(Safety Integrity Level)では、火力発電・化学・環境などのプラント設備で求められる最高水準である「SIL3」の評価を受けている。
「この規格を認証取得するのは、発電所向け制御システムではDIASYS Netmation 4Sが世界初」(三菱重工 エンジニアリング本部 制御システム技術部長 三澤一之氏)。
今回の認証取得では、IEC 61508で定義されている「Vモデル」と呼ばれる開発検証モデルを全面的に採用しているという。テュフズードジャパン 鉄道グループ 機能安全部 部長の浅井由尚氏は「開発期間や開発リソースが膨大なものになる場合、プロジェクトマネジメントは非常に難しくなる。Vモデルを採用するメリットはいろいろあるが、プロジェクトを見える化し、それぞれのフェーズのエンジニアがプロジェクトのどこを担っているかを認識できるのがポイント。三菱重工の場合は、設計者側(V字の左側)に若いエンジニアを起用し、検証側(V字の右側)に経験豊富なベテランエンジニアを配置することで技術の伝承にも役立てている」と語り、認証取得の中でのVモデル積極活用が、開発現場での課題解決にもつながっていることを示した。
なお、DIASYS Netmation 4Sは、2013年11月6〜8日に東京ビッグサイトで開催される「システム コントロール フェア2013」へ出展する予定だという。
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