自動車ジャーナリストの今井優杏さんが、独自の切り口で最新のエコカーや搭載技術を紹介する本連載。今回は、復活なったサザンオールスターズの出演CMでも注目を集めている、フォルクスワーゲンの7代目「ゴルフ」(ゴルフ7)を取り上げる。
やってくれました新型「ゴルフ」。サザンオールスターズ復活劇とのまさかのコラボCMですっかり話題を独占。広告的にも順調な滑り出しを見せましたね!
サザンといえば茅ヶ崎&サーフィン、ということで「どっちか言うたらゴルフやのうてビートルちゃうんかいな」とちょっとはすに構えてはみたものの、クルマファンである前に熱狂的なサザンファンである私、もうもう、復活というだけでオールOK! なキブンにさせてくれるニクイ演出でございました。
ま、そもそもゴルフは「ビートル」の後継モデルとして誕生したわけですし、今やゴルフは全長4265×全幅1800×全高1460mmと、ショートボードはもちろんファンボードなら車内にも積み込めるボディサイズだからしてサーフィンも茅ヶ崎も問題ないでしょう!(と、意味不明に採点が甘いのは、KUWATAマジックのなせるワザ)
さて、サザンはともかく新型ゴルフは通称「ゴルフ7(ごるふ・せぶん)」と呼ばれ、その名の通り7代目というご長寿モデルであるわけです。
ゴルフがクルマ史に燦然(さんぜん)と名を残す輝かしい業績をひもとくのは読者諸兄の自己判断に丸投げするとして(すみません文字数の都合で……えへ!)、とにもかくにも今回の新型ゴルフのお話を進めましょう。
これはとてつもなく質感の高い、化け物のようなモデルです。
すでに試乗記もたくさん世に出回って、「タイヤの最初のひと転がりで良さが分かる」などというオカルトのような文言までが流布する始末ですが、コレほんと。
私に言わせれば、タイヤが転がるその前、運転席に身を沈めてドアを閉じる際の「ボン」というまるで超高級サルーンのような深い音(それはドアという大きな開口部ですらしっかりと固められたボディ剛性のたまものでもあるのですけど)を聞いただけで身震いしました。
その瞬間に、「あ、これはとんでもないものができてきたな」と知ったのです。
ひとたび走り出してみれば、絹をなで上げるかのように滑らかな加速、高い静粛性。どこまでも安定感の高いコーナーリングに貢献する、フォルクスワーゲンならではの明瞭なハンドリングも健在。踏めばバシっと大きくトルクの膨らむスポーティーさも兼ね備え、文句を言うとすれば「イイ子すぎて物足りないかも」なんていう、イジワル婆さんのような感想のみときたもんだ。
や〜もうこんなイイモノをこんな価格(249万円から)で出されちゃったら競合車はどうすんだ! 間違いなく、これまでの同セグメントのスタンダードを覆す存在になるでしょう。
まぁゴルフは輝かしい歴史を残してきたと同時に、勝つこと(売れること)を義務付けられた読売ジャイアンツのようなクルマですから、設計も製造も余すことなく手塩にかけて育てられた純粋培養の超お嬢様なんですね。
プレス向けのプレゼンテーションで繰り広げられたのは“ドヤ顔”ならぬ“ドヤ解説”。
「ゴルフを超えるのはゴルフだけです」
「ゴルフにクラスという概念はありません。これはゴルフクラスという1つのクラスです」
「今できる全てをゴルフに」
など、出るわ出るわの名言集のオンパレードだったのですが、それほどまでにフォルクスワーゲンが自信を持って世に送り出した、文字通りの秘蔵っ子なのです。
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