大手FPGAベンダーのAltera(アルテラ)は、FPGAの車載展開を拡大させている。車載カメラからの映像データの入出力と処理が必要な運転支援システムや、カーナビゲーションシステムに代表される車載情報機器に加えて、電気自動車(EV)の走行用を含めたモーター制御システムへの適用も視野に入れている。
大手FPGAベンダーのAltera(アルテラ)は、FPGAの車載展開を拡大させている。2012年11月に、日本市場での車載分野向けの展開を本格化させると発表(関連記事:アルテラが車載分野への本格展開を宣言、年率20%以上の売上高成長を見込む)して以降、販売パートナーなどと協力して開発した評価ボードを新たに投入するなどしている。FPGAの車載システムへの適用例としては、車載カメラからの映像データの入出力と処理が必要な運転支援システムや、カーナビゲーションシステムに代表される車載情報機器などがあるが、電気自動車(EV)の走行用を含めたモーター制御システムも視野に入れている。
アルテラがFPGAを最も有効に活用できる車載システムとして複数の事例を発表しているのが運転支援システムである。2012年11月の発表では、ミリ波レーダーと車載カメラから得たセンサー情報を「Cyclone IV」で統合するセンサーフュージョンのデモを披露。2013年1月の「オートモーティブワールド 2013」では、Cyclone IVを使って試作したステレオカメラシステムを公開している(関連記事:自動車の中核を担うカーエレクトロニクス、広がり続ける半導体メーカーの役割)。
これらのデモシステムに使用しているのは、普及価格帯のFPGAであるCyclone IVだ。センサーフュージョンのデモでは、Cyclone IVに組み込んだソフトウェアプロセッサ「Nios II」を用いて、8個までの対象を認識していた。これに対して、Cyclone IVを、ハードウェアプロセッサとしてARMのアプリケーションプロセッサコア「Cortex-A9」を集積した「Cyclone V SoC」に置き換えることで、認識可能な対象の数を20個まで増やせるという。「運転支援システムへのCyclone V SoCの適用については、日本の自動車業界からも引き合いが強くなっている」(アルテラ)という。
車載情報機器向けでは、ルネサス エレクトロニクスの最新車載用SoC(System on Chip)「R-Car H2」に対応する入出力インタフェース用コンパニオンボード「Hydra」が、2013年5月に発表された。開発元は、アルテラの販売パートナーのアルティマである。受注開始は同年9月、出荷は10月から始める予定だ。
Hydraには、FPGA「Cyclone V GX」が搭載されており、R-Car H2について映像の入出力をはじめとする各種インタフェースを容易に拡張できるようになる。「高機能のR-Car H2はさまざまなインタフェースを集積しているものの、複数の車載カメラ搭載による映像入力の多チャンネル化や、高解像度のパネルに対応する映像処理、さまざまな液晶ディスプレイパネルとの接続といった、今後登場が予想される新たな機能をカバーするほどのインタフェースを備えているわけではない。Hydraを使えば、これらの新機能に対応するインタフェースをCyclone V GXで実現できる」(アルティマ)。
モーター制御用のプロセッサといえば多くの場合マイコンが利用されている。車載システムでも、パワーウィンドウや電動パワーステアリングシステム、EVやハイブリッド車の走行用モーターに至るまで、ほとんどがマイコンで制御されている。
モーターを進化させるには、モーターそのものの効率を高めるだけでなく、制御処理の高速化によってフィードバックの応答性や回転数の制御を高精度化する必要がある。「マイコンだけでは、より高度なモーター制御を実現しにくい。マイコンと制御アルゴリズムを組み込んだFPGAや、ハードウェアプロセッサを備えるSoC FPGAを使えば、高度なモーター制御を実現できるようになる」(アルテラ)という。
アルテラは、EBV Elektronikが開発した産業機器向けのモーター制御プラットフォーム「FaloconEye」を使って、車載システムのモーター制御に関する提案を行っている。FaloconEyeに搭載されている「Cyclone III」を使えば、高度なモーター制御が可能になるだけでなく、走行用に用いられている永久磁石モーターや、レアアースを使用しないSR(スイッチドリラクタンス)モーター、誘導モーターなど、さまざまなモーターに適したアルゴリズムに書き換えられるというメリットもある。
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