車載機器におけるFPGAの利用が本格化している。車載分野での事業展開を強化しているFPGA大手のXilinxは、カーナビゲーションシステムをはじめとする車載情報機器に次いで、再構成可能というFPGAの特徴を生かすことで運転支援システムも有望市場になると見込む。
FPGA大手のXilinx(ザイリンクス)が車載分野での事業展開を強化している。以前は、新たな車載システムを試作する際に利用するといった用途が多かったFPGAだが、現在ではカーナビゲーションシステム、カーオーディオ、カーエンターテインメントシステムといった車載情報機器の主要部品として量産車にも広く採用されるようになっている。
同社のオートモーティブ事業部でマーケティング/製品企画部門のシニアマネジャーを務めるケビン田中氏は、「2011年度(2011年4月〜2012年3月)の全社売上高のうち、民生用機器向けと車載機器向けが合計で15%を占めている。民生用機器よりも車載機器の方が売上高は少ないが、年平均で20%成長している」と語る。例えば、90nmプロセスで製造するFPGA「Spartan-3」の車載グレード品「XA Spartan-3」であれば、現在は年間800万個を出荷しているという。
車載機器におけるFPGAの主な用途は、車載情報機器のメインプロセッサを補佐する存在と言っていいコンパニオンチップである。田中氏は、「現在、車載情報機器のメインプロセッサとしては、スマートフォンやタブレット端末に搭載されているNVIDIAの『Tegra』などのARMプロセッサやIntelの「Atom」が利用されるようになっている。これらのプロセッサ製品は、車載機器で利用できるように車載品質を満足しているが、だからといってベースとなった製品の設計を変更して車載情報機器に必須の入出力インタフェースを組み込んでいるわけではない。それらの入出力インタフェースをはじめとする周辺機能は、メインプロセッサのコンパニオンチップとなる当社の車載FPGAによって実現されているのだ」と説明する。
ザイリンクスは、車載情報機器向けに「インフォテインメントTDP(Target Design Platform)」と呼ぶ開発キットを展開している。同キットは、ARMプロセッサとAtomのみならず、カーオーディオに広く採用されているルネサス エレクトロニクスの32ビットマイコン「V850ESシリーズ」を搭載するボードも含まれており、「車載情報機器のプロセッサ製品をほとんどカバー」(同氏)しているのだ。
同社が、車載情報機器以外にFPGAの需要拡大を期待しているのが運転支援(ドライバーアシスタンス)システムだ。中でも、車載カメラを用いたシステムは、さまざまな場面でFPGAを活用できるとして提案活動を強化している。
例えば、車両の前後左右に設置した4台のカメラを使って、車両の上から見降ろしたように見える映像を合成し、駐車時などに利用するサラウンドビューシステムでは、カメラとプロセッサを結ぶネットワークに車載イーサネットの利用が検討されている(関連記事1)。田中氏は、「当社の車載グレードFPGA『XA Spartan-6』に、サードパーティが提供する画像処理IPコアや、車載イーサネットに対応するMACとエンドポイントのIPコアを組み込めば、短期間かつ低コストで車載イーサネットを用いたサラウンドビューシステムを開発可能だ」と強調する。
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