点火装置の構成部品は、電子制御の発達に伴って進化してきました。
もちろんその進化は基本構造があってのものですので、まずは基本構造を紹介してから、電子制御を盛り込んだ現在の点火装置へと話を進めていきたいと思います。
点火装置の代表的な構成部品は以下の4つです。
イグニッションコイルには、鉛バッテリーの12Vという出力電圧を、1000倍以上となる1万〜3万Vに昇圧する役割があります。
1000倍以上の電圧にどうやって昇圧するのでしょうか? ここでは、電気が持つ自然現象である、自己誘導作用ならびに相互誘導作用という性質をうまく活用しています。まずは以下の図をご覧ください。
鉄心にコイルを巻いたものを電気負荷とした非常に単純な回路です。この状態でスイッチをオンにすると、コイルに電流が流れて以下のような磁界が発生することになります。
コイルのプラス側(N)からマイナス側(S)へ向かって磁束が生じていますね。
実は電気というのは現在の状態を維持したいという執着心が強い性格を持っています。変化が訪れると、現在の状態を維持するための強い力が働くのです。
その現在の状態というのは自己誘導作用の説明図(2)の状態と考えてください。ではこの状態からスイッチをオフにしてみましょう。
電流が流れなくなるので、当たり前ですが磁界はなくなります。しかし、電気の現在の状態を維持したい強い執着心、すなわち磁界を維持しようという力が働き、もともと電流が流れていた方向に瞬間的に高い電圧の電流が流れるのです(逆起電力)。
この自己誘導作用によって生じる電流の電圧は、もともと流れていた電流の値がより大きいほど、また電流を遮断する速度がより速いほど高くなります。12Vのバッテリー電圧は、瞬間的に約300Vにまで昇圧されるのです。
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