第23回 EMIの原理と対策前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/3 ページ)

» 2013年05月16日 05時30分 公開
[前田真一実装技術/MONOist]

3. EMCの原理

 配線に流れる電流が変化すると、回線の周囲には電界と磁界が発生します(図5)。


図5 図5 配線の電流が変化すると周囲には電界と磁界が発生する

 この電界と磁界は周辺の配線に影響を及ぼします。これはクロストークノイズとして知られている現象です(図6)。

図6 図6 クロストークノイズ(クリックで拡大)
図7 図7 配線の両端が高いインピーダンスだと信号が反射する(クリックで拡大)
図8 図8 輻射ノイズの放出(クリックで拡大)
図9 図9 配線の両端が高インピーダンス(クリックで拡大)
図10 図10 電源が変動するとICの信号すべてが同時に変動する(クリックで拡大)

 このノイズの発生源信号、またはノイズを受けた近隣の配線で終端が取れていない配線では、信号や発生したノイズが反射をします。配線の両端が、共に終端されていないと両端で反射が繰り返されます。信号の波長と配線の長さが偶数倍で一致すると、両端の反射は増幅されて、共振してしまいます(図7)。

 この共振した信号はやはり電界と磁界を発生します。この定常的な電界と磁界は空間に電磁ノイズとして放射されます(図8)。

 配線の両端が終端されていない配線などないように思われますが、実際には結構あるものです。たとえば、双方向の信号で、動作していないときは両端の素子はハイインピーダンスになっています(図9)。これはほんの一例ですが、このような配線を流れる信号によって発生する電磁放射ノイズをデファレンシャルモード・ノイズと呼びます。

 電磁放射ノイズには他のメカニズムによって発生するノイズもあります。たとえば、同時スイッチングノイズではICの動作によって、電源電圧が変動します。電源電圧が変動すると、ICの信号、すべてが変動します。この信号ノイズが放射ノイズを引き起こします(図10)。

 また、プレーン(面配線)の形状に小さな部分や、切り欠きなどがあると、その部分が特定の周波数でプレーン共振と呼ばれる共振を起こします。

 このように電源電圧変動が原因となって発生する放射ノイズをコモンモード・ノイズと呼びます。コモンモード・ノイズは一度に多くの信号を変化させるので、大きなノイズの原因となります。

 同時スイッチングノイズだけでなく、信号の変化が電源やグランドプレーンにノイズを誘導して、これがまた、信号に伝わって、と、信号と電源/グランドのコラボレーションで発生するノイズもあります。たとえば、プレーンの切れ目の上の層を高速信号が横断した場合や、差動平衡配線が不平衡で配線された場合などです(図11)。

図11 図11 信号とプレーンの結合の乱れ(クリックで拡大)

4. ノイズの発生と放射

 電磁ノイズは、ノイズの発生源と、そのノイズを効率よく外部に放射するアンテナが協調して外部へ放出されます。


図12 図12 ダイポールアンテナ
図13 図13 ループアンテナ

 アンテナは大きく分けると電界を効率よく放射するものと、磁界を効率よく放射するものの2つのタイプがあります。電界を効率よく放出する代表的なアンテナはダイポールアンテナと呼ばれるものです(図12)。これに対して、ループアンテナと呼ばれる形状は磁界を効率よく放出します(図13)。

 電界と磁界は、放出されて波長の2π分の1までの距離に到達すると電磁波へと性質を変えて伝播します。この電界や磁界の性質をもっている区間を近傍界(ニアフィールド=Near Field)、電磁波に変化した後を遠方界(Far Field)と呼びます(図14)。

 電界、磁界、電磁波はそれぞれ性質が異なります。

 電界を遮蔽するのが電界シールド、磁界を遮蔽するのが磁気シールド、電磁波を遮蔽するのが電磁シールドです。一般に発生源から離れた場所に放射ノイズが届くときには電磁波となっているため、電磁シールドが一般です。

図14 図14 近傍界と遠方界(クリックで拡大)

 放射ノイズを削減するためには、

  • 放射ノイズを発生しない
  • ノイズを放出しない
  • ノイズを装置から外に出さない

の3つの対策があります。これらの3つの手法を組み合わせて、もっとも効果的な総合的な手法を使います。ノイズを外に出さない遮蔽では、電界シールド、磁気シールド、電磁シールドを効果的に使い分ける必要があります。

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