フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは、カーレース「SUPER GT(スーパーGT)」に参戦し、GTレースカーを活用した次世代車載半導体開発を行うと発表した。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2013年3月1日、カーレース「SUPER GT(スーパーGT)」の「GT300クラス」に参戦し、GTレースカーを活用した次世代車載半導体開発を行うと発表した。参戦チーム名は、「OGT! Bonds Racing」で、車両は日産自動車の「NISSAN GT-R NISMO GT3」の2013年モデルを用いる。
同社は2012年、Porsche(ポルシェ)のスポーツカー「911カレラ」をベースにしたレースカーを用いるワンメイクのカーレース「ポルシェ カレラカップ ジャパン(PCCJ) 2012」に、「OGT! Racing」として参戦。PCCJのレースカーを使って、レース中のドライバーのバイオメトリクス計測や、車載カメラを用いた予防安全技術などに用いる半導体の研究開発を行っている(関連記事)。
2013年は、PCCJからスーパーGTのGT300クラスにステップアップすることで、さらに高度な実験を行って次世代車載半導体の研究開発を加速させたい考えだ。フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン社長のデイビット・M・ユーゼ氏は、「国内トップレベルのカーレースであるスーパーGTで、2012年に引き続き車載半導体開発に取り組めることは非常にうれしい。レースでの勝利を目指すだけでなく、さまざまな実験によって車載半導体を進化させたい。当社のスローガンであり、チーム名にも入っている『OGT(One Great Team)!』の理念の基、進化した車載半導体を提供することで日本に貢献したい」と意気込みを語る。
OGT! Bonds Racingのファーストドライバーは、2012年のPCCJでドライバーを務めたイゴール・スシュコ氏。セカンドドライバーは未定だ。チーム監督は、Bonds Racingの橋本祥之氏である。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが2013年のスーパーGTで予定している研究開発テーマは3つある。
1つ目は、ドライバーの生体情報の取得である。2012年のPCCJでも、ドライバーに装着した筋電センサーと発汗センサーによるストレス計測と、エー・アンド・ディとジースポートが開発した新開発のモーションキャプチャシステムによるドライバーの動きの計測を行っている。このとき、各センサーが取得した情報は、センサーと車両内のユニットを有線で接続して収集していた。
スーパーGTは、PCCJとは異なり、ドライバーの乗り替えがある。この場合、PCCJのような有線接続だと、スムーズな乗り換えが行えなくなる。そこで、センサーが情報の収集を全て無線接続で行うことを検討しているという。
2つ目は、車載カメラとミリ波レーダーを用いた予防安全システムの開発である。PCCJでは、車両の前方、両側方、後方の4面に車載カメラを設置し、これら4個の車載カメラで撮影した映像データを同期して取得するシステムを搭載していた。スーパーGTでは、車載カメラに加えて、SiGeプロセスで製造した77GHz帯ミリ波レーダーの搭載も検討している。
3つ目になるのが、レース中に取得したドライバーの生体情報、予防安全システムの車載カメラやミリ波レーダーのデータを、リアルタイムで車内モニターユニットやレースコースの外に転送するための取り組みである。これによって、ドライバーの体調不良や危険運転などに警告サインを出したり、衝突を回避したり、操縦不能になった場合に遠隔操作でレースカーを停止させられたりするという。
なお、これらの研究開発は、スーパーGTを運営するGTAなどの関係各機関と協議の上、レギュレーションなどに配慮し、レースに支障のない範囲で行うとしている。
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