「自己実現の欲求」を満たすために、私たちが提案するプログラムは、以下の3本の柱から構成されます。
いま一度、自動車を例にこれまでの時代を振り返って商品への欲求変化を探ってみましょう。
これを見ると顧客ニーズが「基本機能」から「経験価値」となり、多様化していることが見て取れます。自動車以外の商品でも同じような傾向があるでしょう。すなわち、これからは「経験」自体が商品になる可能性を秘めているということです。逆に、コモディティ化した商品であっても、その「経験」に着目して機能を作り込めば、まだ成長する余地があるともいえますね。
特別な価値に対する特別な価格設定として、真っ先に思い浮かぶのがスターバックスのコーヒーの例です。普通は、1杯のコーヒーを飲むために400円以上のお金を払うのは「高い」と感じますが、スターバックスで飲むコーヒーは特別な価値を与えてくれるからこそ、その値段を払うのだと思います。
もちろん、コーヒー自体にもこだわりがありますが、それ以上にスターバックスでコーヒーを飲む「経験価値」(時間や雰囲気など)が、ここでは顧客のニーズにマッチしているのだと考えた方が自然ですし、実際にスターバックスはそのような事業展開をしていますね。
外食産業や旅行産業でそういう事例を多く見られますが、顧客ニーズを構造化してみると、実は一般的な購買行動も似たようなパターンがあることが発見できます。
つまり、ニーズの具体化に伴って情緒的機能から物理的機能になり、そして商品へとつながるといえます。すなわち、潜在ニーズであるルーツニーズを満たすためには情緒的機能が必要なのです。情緒的機能とは自己実現への経験価値でもあり、従って顧客の経験価値を探ることがヒット商品を生み出すための大切なプロセスなのです。
私たちが考える「良いコンセプト」とは、ターゲットとして狙ったお客さまに、狙った価値が提供でき、「これが欲しかった」と言ってもらえて、そして喜んで買っていただき、お客さまの思い描く未来を実現させるというものです。そのためには、優れた個人に頼るのでなく、技術などと同様に組織の力として継続して発揮・改善・伝承していくことで、欲しいのはその方法であり、プロセスです。
顧客の声を基にして「良い(魅力的な)コンセプト」を生み出す従来の手法としてQFDがあります。しかし、冒頭でも書いたように現状のQFDでは、新しい価値を見つけるには限界があるのです。
つまり従来方法だけでは、「声に出ない要求」を捕まえることが難しく、過去の成功体験を整理した“一般解”になりやすく、顕在価値だけで“既存商品の延長線上”を目指しやすいのです。だから、顧客の情報の“質”が保証できず、感動商品を産み出すための正解にはたどり着きにくくなります。
良いコンセプトを生み出すためには、商品コンセプトを「見える化」することが大切です。そして、そこに潜在する顧客の思いをくみ上げるための仕組みが必要になります。それは、これまでの個人の感性や経験に基づく仕組みではなく、標準化された仕組みであるべきなのです。そのために、QFDの前段階にコンセプトマイニングという手法を取り入れます。
コンセプトマイニングとは、一言でいえば「商品を企画する際の手順をロジカルに示した方法論」で、経験価値を実現するために消費者の心理を考慮・分析し、「ブレのない商品コンセプト」を設定する手法です。
つまり、情緒的・観念的品質要素を織り込んで具体的な商品コンセプトを創出し、最終的に品質表に落とし込んで、確実に具体化へつなげるシステマチックな手法であるともいえます。
そのために、「(顧客は)○○になりたい」と望んでいるという仮説を立て、その実現へのシナリオを作ります。こうすることで、情緒的機能である経験価値を実現するための物理的機能を明確にできます。
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