科学技術振興機構は、横浜国立大学に委託していた研究開発課題「ロボットへの仮想キャラクタ映像合成システムの開発」において、拡張現実を利用した変身ロボットの試作開発に成功。ベンチャー企業「異次元」を通じて個人向け開発キットの試験販売を計画している。
科学技術振興機構(JST:Japan Science and Technology Agency)は2013年2月7日、2009年度より横浜国立大学に委託していた研究開発課題「ロボットへの仮想キャラクタ映像合成システムの開発」において、拡張現実を利用した変身ロボット「バーチャルヒューマノイド」の試作開発に成功し、この成果を基に、研究開発担当者である庄司道彦氏が出資して、ベンチャー企業「異次元」を設立(同年1月8日)したことを発表した。同社を通じて、バーチャルヒューマノイドの個人向け開発キットの試験販売を行う計画である。
同技術は、緑色に塗られた成人の60%サイズの試作ロボット(上半身のみ、高さ35cm)に、映画の特撮などで用いられるブルーバック合成の手法を利用して、人物映像を合成。ヘッドマウントディスプレイを装着して、合成された映像を体験するものである。
ロボットを覆う外皮の質感も重視しており、握手など、投影された人物との身体接触を伴う体験にもリアリティを持たせている。また、従来の研究では、合成される人物映像よりもロボットのサイズが大きくなければ、人物映像の周縁部が欠けてしまうという欠点があったが、今回、合成アルゴリズムを改善。合成される人物と同等の細身の体格でも、欠損のない合成映像を提示できるようになった。
また、ロボットの動きを関節角センサーで捉え、連動してCGを動かすことにもできる。さらに、合成する人物映像をアニメ風キャラクターに限定し、名古屋工業大学 国際音声技術研究所が開発したキャラクターコンテンツ再生プログラム「MMDAgent」を利用して、ロボットに合成された人物と会話のやりとりも実現する。
将来的にロボット技術が発展し、精密な動きを再現できるようになれば、娯楽用途としてだけではなく、“シリアスゲーム(エンターテインメント性のみを目的とせず、教育や医療用途を目的とするビデオゲームのジャンル)”のように名選手や名演者との共演を通じた教育やトレーニングなどのさまざまな用途に活用できるという。
3月中にWebサイト(現在準備中)を開設し、開発キットの予約受付を開始する予定。販売価格は45〜50万円を想定しているという。初年度の販売目標は120セットで、翌年度には180セット、翌々年度には270セットの販売目指を掲げる。なお、試作品のロボットは「肘」のみが可動するが、製品化時には、「首」と「肩」の前後・左右・ねじり/「肘」「前腕」のねじりに対応する予定だ。
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