全固体電池の実用化に向けて課題となっているのが、固体電解質のイオン伝導度の低さである。イオン伝導度が低いと、電池内部において、正極から負極、もしくは負極から正極に電力が移動しにくくなるため、電池の充放電のしやすさの目安となる入力/出力密度が低下してしまう。従来の固体電解質のイオン伝導度は、一般的なリチウムイオン電池の電解液と比べて3分の1以下にとどまっていた。
トヨタ自動車は、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構との共同研究により、リチウムイオン電池の電解液と同等のイオン伝導度を持つ固体電解質「Li10GeP2S12」を開発した。
この固体電解質と、一般的なリチウムイオン電池に用いられている正極材料と負極材料を使って試作した全固体電池は、従来の全固体電池と比べて出力密度が5倍となる2000Wh/l(リットル)以上を実現したという。電池内部で、負極−電解質−正極という組み合わせを7個直列で接続しており、出力電圧は約28Vである。
ただし、Li10GeP2S12は、負極材料の黒鉛と接触すると反応しやすい。このため、負極材料と接する固体電解質には、従来の材料である「75Li2S・25P2S5」を用いている。このため、入力密度は、従来の全固体電池とほぼ変わらない。
この他の課題としては、高価なGe(ゲルマニウム)の安価な材料への代替が挙げられるという。
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