トヨタ自動車は、実用的な走行距離を持つ電気自動車(EV)を開発するために、現行のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を持つ「革新型電池」の研究開発を進めている。「エコプロダクツ2012」では、革新型電池の1つである全固体電池の開発成果を披露した。
電気自動車(EV)の製品展開に積極的ではないと言われるトヨタ自動車。これは、EVの満充電からの走行距離が100〜200km程度と、ガソリン満タンであれば500km以上走行できる内燃機関車と比べて圧倒的に少ないことが最大の理由だ。
現行のEVに用いられているリチウムイオン電池の重量や体積当たりの充電容量(エネルギー密度)で、満充電からの走行距離が500km以上のEVを開発するには、車両を大型化して大量の電池を搭載するしかない。
トヨタ自動車が、現時点で実用的なエコカーとしてプラグインハイブリッド車(PHEV)の「プリウスPHV」に注力しているのは、充電が切れたらガソリンを使って走らざるを得ないとはいえ、EVのような走行距離の問題が存在しないからだ。
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トヨタ自動車は、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度が低いことに起因するEVの実用性の低さを解決するために、より高いエネルギー密度を持つ「革新型電池」の研究開発を進めている。
環境関連製品・技術の展示会「エコプロダクツ2012」(2012年12月13〜15日、東京ビッグサイト)では、革新型電池の1つである全固体電池の開発成果を披露した。全固体電池は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の二次電池の技術開発ロードマップにおいて、2020〜2025年ごろの実用化が目標となっている。
全固体電池とは、リチウムイオン電池に用いられている電解液を、固体電解質に置き換えることで、構成材料を全て固体にした電池のことである。全固体電池のメリットは2つある。1つは、負極−電解質−正極−負極−電解質−正極……というように、電極と電解質を直接並べて直列化した構造を持つ電池を製造できることだ。現行のリチウムイオン電池モジュールでは、負極−電解液−正極から構成されるで電池セルを、銅線やバスバーなどを使って直列接続しているが、これらを1個の電池セルの中で実現できるようになる。つまり、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略できるので、電池のエネルギー密度が大幅に高められるというわけだ。
もう1つのメリットは、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める上で必要になる、高電位化が可能な正極材料との相性の良さである。これらの新たな正極材料は、電解液と接触すると反応して分解してしまうが、固体電解質であれば分解は起こらないというのだ。
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