Opera Softwareは、車載情報機器向けとして、「Opera Device SDK」と「Opera Mini」を提供する方針である。
Opera Device SDKは、PCやモバイル機器、タブレット端末以外の組み込み機器でOperaを利用するためのソフトウェアパッケージである。同SDKを用いれば、HTML5対応のWebブラウザのみならず、先述した独自UIの作成や、アプリストアの利用も可能である。HTML5以外にも、Ajax、CEA(米国家電協会)が定める民生用機器向けのUI作成用言語であるCE-HTMLや、欧州のインターネットテレビ放送向け規格HbbTVなど、最新のWeb標準に対応。車載情報機器に用いられている25以上のSoC(System on Chip)プラットフォームをサポートしている。
GPS(全地球測位システム)をはじめとする、プロセッサに外付けのデバイスを使ってUIやアプリケーションを開発する際には、「Native JavaScript Extensions(NJSE)」と呼ぶAPI(Application Program Interface)により外付けデバイスのプラグインを呼び出せばよい。
Opera Device SDKは、動作周波数が300〜400MHzのシングルコアプロセッサと、60Mバイト程度のDRAMを持つハードウェアであれば動作させることが可能だ。ただし、複数タブを同時に表示にさせる場合には、さらにメモリが必要になる。Hernes氏は、「高機能の車載情報機器を開発するのであれば、Opera Device SDKを使った魅力あるUIにより、顧客に興味を持ってもらえるはずだ」と説明する。
取材では、Acerのタブレット端末「ICONIA TAB A500」を用いて、カーナビ向けのUIや、WebGLを使った3Dグラフィックスの表示、HTML5ベースのアプリケーションの動作などのデモンストレーションを見せてくれた。
一方、Opera Miniは、携帯電話機やスマートフォンなどに提供されている、占有メモリが1Mバイトと軽量が特徴のWebブラウザだ。同社が保有するOpera Miniサーバを経由してWebサイトにアクセスすることにより、最大90%のデータ圧縮による高速描画が可能になる。例えば、
Opera Miniで扱う全てのトラフィックは、Opera Miniサーバを経由して流れるので、JavaScriptなどで外部から端末をハッキングすることなどできないようになっている。「人命と深くかかわる自動車に搭載される車載情報機器において、このような形でセキュリティを確保できることは、際立った長所になると考えている」(Hernes氏)という。
最後にHernes氏は、「フォードとの開発プロジェクトは2006年に立ち上げて、その後何年もかけて実用化にこぎつけた。その間、車載情報機器向けプロセッサの処理能力は格段に進歩しており、WebブラウザベースのUIを遅滞なく動作させられるようになった。今後は、車載情報機器にもOperaが広く採用されるようになると確信している」と述べている。
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