組み込み向けRubyから“不死身”のマイコンまで――Embedded Technology West 2012ETWest2012(2/2 ページ)

» 2012年06月22日 10時50分 公開
[西坂真人,@IT MONOist]
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M2Mソリューションに注目――コア

 在阪の組み込み関連企業として、ETWestでは毎年趣向を凝らした展示が話題のコアのブースでは、「コアのM2Mがエンベデッドクラウドを加速!」をテーマに、M2M関連のソリューションを数多く展示していた。

 同社は、2010年11月に設立した「新世代M2Mコンソーシアム」に加盟するなどM2M向け組み込みソリューションに力を入れている。会場では同社のM2Mクラウド環境基盤「CORE M2M Service Suites for Server」を軸とした各種サービスを紹介していたほか、同社が得意とするモジュール・ボード開発を生かした特小無線モジュール評価プラットフォームや汎用センサモジュール評価プラットフォーム、NFC/BLE ComboBoardといったセンサネットワークソリューションに注目が集まっていた。

photo 開発中のM2Mセンサネットワークソリューション製品群

 「新世代M2Mコンソーシアムの中でも、M2Mで何ができるかというのは模索しているが、関西のM2M市場もビジネスとしてはこれから立ち上がるといった状況。農業などIT化されていない分野へのM2M展開に期待している」(コア)。

“不死身”の組み込み機器を――エルイーテック

 昨年のET2011で「ETアワード2011 最優秀賞」を受賞したエルイーテックのブースでは、その受賞技術である「FUJIMI」を分かりやすく紹介するデモンストレーションを行っていた。

 FUJIMIは、外部からのノイズなどでマイコンが暴走状態になっても、瞬時に暴走前の状態に復帰することで、ユーザーには誤動作を感じさせないような状態で使用し続けることができる高レジリエンス(Resilience:復元力、回復力)なマイコン技術だ。2012年4月には富士通セミコンダクターの汎用マイコン「FM3ファミリ」への採用もアナウンスされており、2013年の第1四半期にはFUJIMIを実装した製品が市場に登場する予定となっている。

photo 富士通セミコンダクターのブースではFUJIMIの高レジリエンス技術をパネルで説明していた

 ブースでは、下部のデジタルカウンタのカウント情報を上部の2つのデジタルカウンタに伝達するボードを展示。伝達経路の途中でノイズを発生させると、FUJIMIを実装していない左のデジタルカウンタはマイコンがリセットされてゼロからのカウントになってしまったが、FUJIMIを実装した右のデジタルカウンタは継続処理が作動してカウントがゼロになるのを防いでいる。写真では下部のカウント(268)に対して上部のカウント(266)と値が2ほどずれているが、これは定期的な割り込みで保存している過去情報を参照して情報を復帰させているためだ。

photo 会場ではFUJIMIを実装したボードで高レジリエンスな技術であることを分かりやすく紹介

 「短い一定周期で割り込みをかけ、CPUのリアルタイムリセットを行っているのがFUJIMIの特徴。暴走を検出したら、1つ前に保存した正常動作時の情報で復帰を行うため、ユーザーから見ると何もなかったかのように動作し続けることができる。第1弾としては、風向・風速計のようなビルなどの高い場所にあってメンテナンスがしづらい環境にある製品への利用が考えられる。そのほかM2M/センサネットワーク機器への応用や、自動車への展開も視野に入れている」(エルイーテック)。

基調講演や各種セミナーも好評

 今年のETWestは講演やセミナーにも力を入れており、在阪企業の大和ハウスによるスマートエネルギーをテーマにした基調講演を筆頭に、Ruby生みの親のまつもとゆきひろ氏による話題のmrubyに関する講演など、東京で開催するET展とはまた違う講演内容を用意していた。また、前回は有料だったテクニカルセミナーを無料で開放するなど、できるだけ多くの人に受講してもらおうという取り組みは来場者にも好評だった。

スマートハウスの可能性を提示

photo 大和ハウス工業 総合技術研究所 所長代行の有吉善則氏は「未来を創るスマートハウス」と題した基調講演で、住まいのあるべき姿を同社のスマートハウスを例に紹介。単身者や高齢者など世帯数増加によるエネルギー需要増や既存住宅の市場流通の伸び悩み、東日本大震災後のエネルギー需給の見通しなど日本が抱える課題を挙げ、これからの住宅=スマートハウスに求められる条件を提示した

期待高まる「mruby」

photo まつもとゆきひろ氏(ネットワーク応用通信研究所 フェロー)による基調講演「広がるRubyの可能性」。2012年4月に組み込み機器向け“軽量Ruby”「mruby」が公開された直後の公の場での講演とあって、非常に多くの聴講者を集めていたが、mrubyの話は最後の10数分のみと少々残念な内容に。それもあってか、展示会場のRubyビジネス推進協議会ブースでは、講演後に多くの人がつめかけ、まつもと氏に質問を投げかける姿が見られた(基調講演の詳細はこちらの記事を参照)

無線電力伝送の最新技術動向

photo ETWest×Smart Energy Japan合同セッションとして、パネルディスカッション「モバイル機器充電からエネルギー問題の解決まで〜大きな注目を集める無線電力伝送の技術と応用」が行われ、無線電力伝送の最新技術動向が語られた。写真は左から粟井郁雄氏(リューテック 代表取締役 工学博士)、黒田直祐氏(フィリップス・エレクトロニクス・ジャパン 知的財産・システム標準本部 システム標準部 部長)、篠原真毅氏(京都大学 生存圏研究所 教授)、モデレータの菅野浩氏(パナソニック 本社R&D部門 材料・プロセス開発センター 主幹技師)
photo ETWestの会場にはETロボコンの公式コースも用意。デモ走行やミニ競技会も開催された
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