組み込み技術展「ET」の関西版「Embedded Technology West(ETWest)2012」が大阪で開催された。スマートエネルギーの専門展との同時開催で例年以上の盛り上がりを見せたETWestから、MONOist編集部が注目した展示をピックアップ。
西日本唯一の組み込みシステム技術専門展示会「Embedded Technology West(ETWest)2012」が、インテックス大阪(大阪府大阪市)で2012年6月14、15の両日に開催された。
今回のETWestは、新エネルギー/スマートグリッド関連分野の専門展示会「Smart Energy Japan(SEJ) 2012 in Osaka」との同時開催となり、従来を上回る大規模な展示会となることが見込まれていた。主催者の組込みシステム技術協会によると、2日間の来場者は4963人だった昨年を大きく上回る5551人となったようで、例年以上に見どころにあふれた展示会に多くの西日本の技術者が足を運んだといえる。
盛り上がりを見せたETWestから、MONOist編集部が注目した展示をピックアップしてお届けする。
図研エルミックのブースでは、2012年6月8日に発表したばかりの新技術として、スマートフォンと車載ディスプレイをつなぐ新通信規格「MirrorLink」対応ソフトウェアのデモンストレーションを行っていた。
同ソフトウェアは図研エルミックがルネサス エレクトロニクスと共同で開発したものでルネサス エレクトロニクスの車載向け32ビットマイコン「SH7269」用に最適化。これにより、カーオーディオ向けに広く普及しているSH7269を搭載した車載機器のMirrorLink対応が早期に実現するという。会場ではルネサス製「SH7269評価ボード」を使い、開発中のソフトウェアを搭載した車載ディスプレイとスマートフォンとがシームレスに連携するMirrorLinkの紹介が行われていた。
「MirrorLinkではスマートフォンの音楽機能や地図機能などを車載の大きなディスプレイで利用可能。車載のカーナビなどでは基本的にアプリケーションの追加はできないが、スマートフォンなら常に最新のアプリを利用できる。USB経由でスマートフォン側への給電も行えるので、自動車での長時間使用時もバッテリーを気にしなくていい」(図研エルミック)。
まつもとゆきひろ氏の基調講演が話題となった今回のETWestだが、Rubyビジネス推進協議会のブースにも“Rubyの組み込み応用”に高い関心を示す来場者が数多く訪れていた。
2012年4月に公開されたmrubyは、Rubyの長所を生かしつつ、よりコンパクトな構造に軽量化・最適化された組み込み機器向けの新しい処理系言語。通常のRubyはスクリプト言語をインタプリタで実行するが、mrubyはRiteVMという実行環境が用意されており、コンパイラによって生成される中間コード(Ruby中間表現)をRiteVM上で実行するという仕組みだ。
「従来のC言語に比べると圧倒的にコード量を減らせる。可読性も高まるのでメンテナンス性も向上する。サイズが小さいとバグ発生の確率も減ってくる。文字列処理やI/O処理といったRubyが得意とする処理はmrubyでも継承。またネットワーク機器などではC言語でコーディングを行うと結構面倒なのだが、Rubyでは非常に効率よく開発できる」(Rubyビジネス推進協議会)。
mrubyは公開されたばかりでライブラリも少なく、デバイスドライバなどの充実は必要だが、環境が整ってくればRubyの良さである「開発生産性の高さ」が組み込み機器でも享受できるという。
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