ここで一度、頭を冷やして、現状のプロセスでの課題を整理してみよう。
その日は会社帰りの駅に向かう途中にある一軒の小料理屋に入った。ここはお気に入りの店の1つで数カ月に1回立ち寄ることがある。今日のような日は立ち寄らずにはいられない気分だった。
「今日みたいな日は、さ。ちょっとは飲まないとやっていけないよな」
店に入ると、カウンターの奥に見覚えのある男の姿が見えた。工場で生産計画を担当しているSだ*。旧知の仲で、職場こそ同じになったことはないものの、お互いに考え方が似ている部分があるため、なんでも話せる気の合う相手である。
* Sさんについては第1回参照。
「お、Sくんじゃないか、どうしてここに? 1人か?」
「あっ。Oさん、ごぶさたしてます。今日は本社出張だったんで、夕食がてらにここに来たんですよ。Oさんこそどうしたんですか? 何だか機嫌悪そうな顔してますよ」
「いやぁ、実はねぇ……」
私は今日の出来事をSに打ち明けた。
話を一通りじっと聞いたあと、Sは思い出したように「実は私もいまの製販調整会議が何とかならないものかって考えていたところなんです。ちょうどその件をOさんに相談しようと思っていたんですよ。少し調べてみたんですけど、どうも海外では『S&OPプロセス』という枠組みで問題を解決しているらしいんです」
「なんだそれ?」
その夜は大いに盛り上がり、終電時刻ギリギリまで飲んだものの、翌朝のO統括本部長の頭の中には“S&OPプロセス”という言葉だけは記憶に残っていた。
出社して机に座ると、早速インターネットを使ってS&OPプロセスについて調べてみた。
「うむうむ、これはもしかしたら、うちの会社が抱えている問題を解決できるかもしれないな。」と独りごとをつぶやいたあと、なにかを思い出した。
「S&OPか。そういえばどこかで聞いたことがあるような……」
「そうだ、先日の同窓会で会ったPくんが、彼の会社で昨年導入した海外のプロセスがどうしたこうしたって自慢していたな。それがS&OPだったような。たしか名刺の裏にメモした覚えが……」
名刺を取り出してみると、確かに酔った文字でS&OPと書いてある。「ようし、まずはあいつに話を聞いてみるか」と、名刺に書いてあったメールアドレス宛にO統括本部長はメールを書き始めた。(次回に続く)
O統括本部長は、無駄な会議にイライラしていますが、部下も同様に、ムダな数字を基にしたムダな会議にへきえきしているようです。結果として無意味な議論と言い訳、感情論しか出てこず、建設的な対策がまるでできていません。その理由の1つは、数字を出すのに時間がかかること。タイトな日程で正確な数字を出す仕組みがなければ、日々の数字に追われる現場ではとても対応できないのは自明のことです。同窓生Pさんの出したキーワードは救いの手になるのでしょうか? 次回はPさんがエッセンスをレクチャしてくれます。お楽しみに!
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