トヨタが燃料電池車の普及目指す、さいたま市と共同で電気自動車

トヨタ自動車はさいたま市と燃料電池車(FCV)普及策で協力する。さいたま市が電気自動車(EV)以外にFCVの普及を目指しているためだ。トヨタ自動車はF2H(FCV to Home)などの新機軸を打ち出した。

» 2011年10月28日 12時50分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 トヨタ自動車は2011年10月27日、さいたま市と協力して環境対応車のインフラ作りを推進すると発表した。

 さいたま市は持続可能な低炭素社会の実現を目指したプロジェクト「E-KIZUNA Project」を2009年から立ち上げている。「当初は電気自動車(EV)の普及施策を重視していたが*1)、燃料電池車(FCV)についてもさいたま市と合意できたため、協定書の交換に至った」(トヨタ自動車)。

*1)E-KIZUNA Projectには既に日産自動車、富士重工業、ホンダ、三菱自動車が参加しており、トヨタ自動車は5番目のメンバーである。「EVの量産では当社よりも先を進んでいる自動車メーカーがある」(トヨタ自動車)。このため、EVの普及策だけでは参加しにくかった。

 さいたま市は2011年10月4日に、政府に対して総合特別区域法に基づく「次世代自動車・スマートエネルギー特区」指定を申請している。そこでは3つの項目、すなわち、(1)ハイパーエネルギーステーションの普及、(2)スマートホームコミュニティの普及、(3)低炭素型パーソナルモビリティの普及、をうたっている(図1)。

 (1)は既設の160カ所のガソリンスタンドの一部にEVの急速充電器だけでなく、水素充填設備を増設することを目標としている*2)

*2)(2)では太陽光発電や燃料電池を備えたスマートホームを100戸程度コミュニティとして構築し、EVや蓄電池と組み合わせることを目指している。(3)では産学連携の2人乗りEV原動機付き自転車の開発普及を狙っている。

図1 さいたま市の次世代自動車・スマートエネルギー特区構想 FCV対応のハイパーエネルギーステーションを市内に4カ所設置(EV対応は96カ所)し、桜区に100戸程度のスマートホームを構築することを目指す。出典:さいたま市

FCVの普及策をさいたま市から広げていく

 トヨタ自動車は今後、以下の3項目についてさいたま市と検討・協議するという。特にFCVを家庭などの電力源とする開発(EVでの「E2V」に相当)や、FCVの共同利用(カーシェアリング)といった項目は、他の自動車メーカーが打ち出していない新機軸である。

(A)充電・充填セーフティネットの構築

 EV用の充電セーフティネットワークの構築の他、燃料電池車(FCV)用の水素充填インフラ整備の検討を進める。FCVなどの次世代車の積極的供給など。

(B)需要創出とインセンティブの付与

 FCVなどに電源供給機能を追加する。公共車両、公用車両にFCVなどを導入する(図2)。

(C)地域密着型の普及・啓蒙活動

 FCVなどの共同利用の検討、学校におけるEV・FCV教室の開催、EV・FCVの試乗会の開催。


図2 トヨタ自動車のFCV 成田国際空港でのFCVハイヤー実証に提供した「FCHV-adv」。固体高分子形燃料電池とニッケル水素二次電池を搭載する。高圧水素タンクの容量は156L。燃料電池の出力は90kW。最高速度は155km。走行距離は760km(JC08モード)。出典:トヨタ自動車

 トヨタ自動車など自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社は、2015年に向けた共同声明「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を2011年1月に発表している。共同声明では太平洋ベルト地帯に位置する4大都市圏とこれらを相互に結ぶ高速道路に水素供給インフラを整備するとしている。「4大都市圏で100カ所の水素供給インフラを整備する予定である。さいたま市は4大都市圏に含まれており、共同声明を生かした取り組みを進めたい」(トヨタ自動車)。


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