燃料電池スクーターの実証実験を開始、北九州市が350km走行可能なスズキの車両を使用電気自動車

北九州市は水素利用に熱心である。水素パイプラインや供給ステーションを設置済みであり、定置型の燃料電池の実証実験を始めている。今回、小型移動体への取り組みの一環としてスクーターを実証実験を開始した。

» 2011年05月27日 11時00分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 北九州市は2011年5月26日、水素燃料電池スクーターの実証実験を国内で初めて開始したと発表した。水素ステーションでスクーターに水素を充填し、市街地で実証走行する。

 実証走行するのはスズキが開発した「バーグマン フューエルセル スクーター」。700気圧の圧縮水素をタンクに蓄え、空冷式の固体高分子型燃料電池と交流同期電動機を内蔵する。走行距離は約350km。日本国内向けのスクーター「スカイウェイブ」と同系列の欧州向けバーグマンをベース車両として、英Intelligent Energyの燃料電池を取り付けた。英国では2010年2月から英政府機関であるTechnology Strategy Boardと共同で公道実証試験を始めている。

ALT 図1 水素ステーションと水素燃料電池スクーター スズキの「バーグマン フューエルセル スクーター」を使って実証実験を進める。スクーターの全長は2055mm。

水素への取り組みが際立つ北九州市

 日本国内で水素燃料電池に最も積極的に取り組んでいるのは北九州市である。2009年9月には「水素ハイウェイ」を構築するため、新日本製鉄の八幡製鉄所でコークス製造時に副成する水素を集める北九州水素ステーションを設置済みだ。

 2010年8月、経済産業省がスマートグリッドの実証実験のために横浜市、愛知県豊田市、京都府の3自治体、北九州市の4地域を選定した際も、北九州市は水素利用をうたっている。同実証実験「北九州スマートコミュニティ創造事業」では地区内の電力の10%以上を新エネルギーや地域エネルギーで供給することを目標に、工場群に隣接する住宅などへ水素や排熱を供給し、建物間での電力の融通を進める。

 2011年1月には「水素タウンプロジェクト」を北九州市八幡東区で開始(図2)。エネルギー事業者13社が参加する水素供給・利用技術研究組合(HySUT)が家庭向けの水素供給の実証実験に取り組んでいる。

ALT 図2 水素タウンの構成図 左下の製鉄所から中央上の北九州水素ステーションに水素を供給する。その後、ステーションから各施設に水素を分配する仕組みだ。家庭用燃料電池や業務用燃料電池、小型移動体、カートリッジへの充填など、さまざまな用途を想定している。

 さらに、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業の自動車メーカー3社と、エネルギー事業者10社は、同月、「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表している。水素供給インフラと燃料電池車を2015年までに用意するという声明だ。水素供給インフラは4大都市圏と都市圏をつなぐ高速道路に配置する計画であり、北九州市は西の要となる予定だ。

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