トヨタ自動車は2015年に北米と日本で燃料電池車の量産車を導入する。燃料電池車は水素を利用するため、水素インフラの設置が欠かせない。今回北米に導入した水素ステーションは連続的な水素の供給が可能であり、実運用を目指した施設である。
トヨタ自動車の米国法人であるToyota Motor Salesは、2011年5月10日(現地時間)、燃料電池車用の水素ステーションを米カリフォルニア州南西部のトーランス市に開設したと発表した(図1)。トーランス市はロサンゼルス国際空港の南に位置する都市。
水素をパイプライン経由で連続的に供給するパイプライン型のステーションとしては米国初だという。パイプライン型は水素を大量に供給できるため、実運用に適している。水素はロサンゼルス市ウィルミントンなどで製造した。今後水素ステーションを増やしていき、2015年には北米で燃料電池車の量産車を発売する予定だ。
今回の水素ステーションはToyota Motor Salesの敷地内にあり、オペレーションを石油大手のRoyal Dutch Shellに委託する。Royal Dutch Shelが水素ステーション設置に関して、自動車メーカーと協力するのは初めてのことだという。
Royal Dutch Shellは、水素など各種のガスや化学製品を製造販売するAir Products and Chemicalsと協力して水素ステーションを運営する。Air Products and Chemicalsはトヨタ自動車と、燃料電池車を無線で認識するシステム「HVAS(Hydrogen Vehicle Authorization System )」を開発した。HVASはユーザーが水素を充填する操作を容易にするシステムだ。
今回のプロジェクトの資金は、大気汚染を監視する政府機関であるSouth Coast Air Quality Management Districtと、エネルギー省(DoE)が提供した。
トヨタ自動車は固体高分子形燃料電池を開発生産するBallard Power Systemsと2010年に提携している。水素ステーションは水素パイプラインに接続されているため、いつでも十分な水素を入手できる。そこで、2012年には今回の水素ステーションの敷地内に出力1MWの固体高分子形燃料電池を設置し、水素パイプラインと接続する予定だ。
これにより、燃料電池車に水素を供給するだけでなく、電力や熱の供給が可能になる。Toyota Motor Salesのピーク電力需要を賄う他、燃料電池が排出する温水を同社のプールや暖房用に供給する計画だ。
トヨタ自動車は、次世代の環境対応車を3種類の方式で実現しようとしている。電気自動車(EV)、「プリウス」として製品化済みのハイブリッド自動車(HEV)と外部からの充電が可能なプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池車(FCV)だ(図2)。燃料電池車は長距離輸送向けのトラックや路線バスなど移動距離が長い用途に向けている。トヨタ自動車は固体高分子形燃料電池スタックの他、車載用の高圧水素タンク技術に強みがある。
トヨタ自動車は日本国内の燃料電池車普及も見込む。日産自動車や本田技研工業などの自動車メーカー3社の他、エネルギー事業者10社と共同で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を2011年1月に発表している。2015年までに日本国内に量産車を導入する他、太平洋ベルト地帯に位置する4大都市圏と高速道路に水素ステーションを共同で100カ所程度配置する予定だ。
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