火力発電の模擬装置や4MW以上の太陽光発電システムを置く。変電所や大容量のNaS蓄電池を経由した電力を3棟の模擬ビルや30軒の模擬住宅に送るという大規模な実験だ。スマートメーターの分散ネットワークでつなぐ。
三菱電機は2011年10月19日、兵庫県尼崎市の同社先端技術総合研究所で記者会見を実施。会見で同社社長の山西健一郎氏(図1)は、尼崎地区と和歌山地区拠点において2010年5月から順次導入を進めてきたスマートグリッド・スマートコミュニティー実証実験設備の本格稼働を開始したことを明らかにした*1)。
*1)今後EV(電気自動車)を接続した実験や鉄道連携の実験を追加していく計画だ。
同社は(1)太陽光発電システムや発電・変電所設備、系統制御などの基幹系、(2)配電自動化設備や電子メーター(スマートメーター)などの配電系、(3)太陽光発電システム、オール電化機器などの需要家の要素技術と製品をもつ総合力を生かし、2010年度約8000億円だったスマートグリッド・スマートコミュニティー関連事業売り上げを、2015年度に1兆3000億円まで拡大する方針を既に明らかにしている。
今回の実証実験は、3地区に散らばる自社内設備を使用してこれらの関連技術の検証を行い、各種システムの早期確立、製品化を目指すもの(図2)。同社の研究施設が集積する尼崎地区(兵庫県)には、4000kW(4MW)のメガソーラー(図3)と電力流通システム全体を立ち上げた。和歌山地区(和歌山県)には200kWの太陽光発電システムを置いた。大船地区(神奈川県)に家庭用太陽光発電システムとオール電化システム、ホームゲートウェイ、蓄電池などを設備した実証ハウス1棟を設けた。これら全体をシステム連携して大規模な太陽光発電を導入する際の技術ノウハウを検証する。
実証実験設備は4種類の施設からなる。第1は、太陽光発電システム(尼崎地区4000kW、和歌山地区200kW)や実証用配電線などの実証インフラだ。第2に可変速揚水発電模擬装置や火力発電模擬装置、系統用蓄電池などの基幹系がある。第3にセンサー付き開閉器や次世代電子メーター(図4)などの配電系である。最後に需要家の模擬負荷装置(大口需要家3カ所、住宅30軒)などからなる。
投資総額は約70億円。スマートグリッド・スマートコミュニティーの規模や条件、機器・システムの使われ方を想定した4つのモード(需給検証モード、配電検証モード、総合検証モード、特定地域・離島検証モード)による検証を進める。
記者会見で山西氏は「需給制御・送配電システムなどのスマートグリッド、つまり電力の供給側から、住宅・ビル・工場・交通システムなど電力を使用する需要家側まで一元的に検証できることが、他社にない当社の大きな特徴(図5。さらに、自社内設備を使用することで、停電など異常時の対応の検証が可能なことが大きなメリットとなる」と語った。
三菱電機は2015年度の売上高目標のうち、約3割をスマートグリッド、スマートコミュニティー分野に求めている。大きく成長するのはどの分野なのだろうか?
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