強度が強く、剛性が高い一方、成形に比較的時間がかかる熱硬化CFRPと、成形性がよく短時間で成形できる熱可塑CFRPの使い分けが、EVには重要だという。最も単純な使い分けは、乗員スペース(サバイバルゾーン)に熱硬化CFRPを使い、車体前後のクラッシャブルゾーンには衝突エネルギーを吸収するため、熱可塑CFRPを使うというものだ。「実際には、熱可塑CFRPの力学特性と成形性は相反する性質を持ちさまざまな組み合わせを作り出せる。熱硬化CFRPや射出材と併せて、EVの設計段階から自動車メーカーと求められる強度などを細かく詰める必要がある」(梁井氏)。
熱可塑CFRPを使うか、熱硬化CFRPを使うかを選択する以外にも、設計に関係する材料の性質がある。CFRPは製造時に炭素繊維の糸の方向を制御することで、強度に異方性を持たせることができる。例えば、プロペラシャフトであればねじれ方向などに強度を持たせ、CNG(圧縮天然ガス)タンクであれば膨張方向に強度を持たせる(図4)。
プロペラシャフトやCNGタンクなどのような部品に限らず、平面状の部品であってもEVのボディにはねじれなど複雑な力がかかる(図5)。これをEV開発時から共同設計し、材料の使用量を引き下げながら、強度を保つ取り組みが重要だ*4)。
*4)このような取り組みを進めるため、同社は名古屋にオートモーティブセンターを置いている。2011年7月には上海にもオートモーティブセンターを設置した。
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