オープンソース方式でインホイールモーター型EV開発を進めるシムドライブが、化学メーカーなどの参加を得て先行開発車事業第2号を開始した。第1号の完成車は3月末に公開する。
インホイールモーター型EVを開発するEVベンチャーのシムドライブが1月26日に、複数企業と共同で量産を前提としたEVを開発する、先行開発車事業第2号を開始したと発表した。2010年1月に発表した第1号案件の参加企業と異なり日本を代表する化学メーカーが参画したことが特徴。
シムドライブは、慶応大学教授で30年間にわたりEVを開発してきた清水浩氏が2009年にベネッセホールディングスやガリバーインターナショナルなどの出資を受けて設立した。シムドライブは自社でのEV製造・販売は行わず「EV技術をいかに早く世界に広めるか」に注力している。このためソフトウェアのオープンソース方式開発の考え方を導入し、多数の企業と共同で先行開発車事業を進めている。この事業で得られたすべての技術情報は参加企業に提供される仕組み。同社では1年サイクルで別の先行開発車事業を行う計画だが、そのどれかの事業に参加(参加費は2000万円)すれば、過去から将来にわたるすべての技術情報を得られる。先行車開発事業に参加しない企業も、技術移転料を支払って情報を入手できるとしている。
シムドライブが持つEV基本技術は大きく2つ。「インホイールモーター」と「コンポーネントビルトイン式フレーム」だ。インホイールモーターとは、タイヤのホイールに内蔵された駆動用モーターで、エンジンを置き換える一般的なEVと比較すると、減速ギヤなどを使わず直接タイヤを駆動するため摩擦などを最小限に抑えることができ、同じ容量の電池でも航続距離を30〜50%伸ばせる。ボディ内部で利用できる空間を最大限にできる利点もある。
コンポーネントビルトイン式フレームは、床下に強固なフレーム構造を作りその中に電池、インバーター、メインコントローラーなどの基本部品をすべて装備するというもの。車体全体が軽量化でき、有効利用可能な空間も広げられるほか、重心が下がる、衝突安全性の高いボディを作ることができる利点があるという。
第2号事業では社名を公開しない企業も含めて、第1号事業と同数の34社が参加した。社名を公開した27社は以下の通り。
第1号事業では自動車メーカーとしていすゞ自動車と三菱自動車工業が参加したほか、電池・自動車部品・精密機器・重工業・商社が名前を連ねていた。第2号事業では、旭化成、クラレ、デュポン、東レなど化学素材メーカーや合成樹脂メーカーが多く参画しているのが特徴的だ。また初めて欧州から自動車メーカーとしてPSA Peugeot Citroen、部品メーカーとしてBoschが参画した。多数の大企業が世界から参画したことについて、清水社長はメディアによってシムドライブの知名度が上がったからと謙遜するが、もちろん同社技術の先進性や将来性、オープンな開発手法が評価されたことが理由だろう。
清水社長によると、第1号事業では、マルチリンクサスペンション、スチールモノコックボディと一体化したコンポーネント式ビルトインフレーム、サイドインパクトモールを採用した低空気抵抗ボディの3つの技術開発した。この技術を採用した第1号事業完成車は3月29日に公開する予定で、今回の発表会では車体部分をぼかした写真を見せるにとどまった。なお、第1号事業で開発したEVの量産化については、ナノオプトニクス・エナジーが2011年春に鳥取県米子市で製造・開発に着手、2013年半ばに量産化することでシムドライブと合意している。
第2号事業でどのような種類のEVを開発するかは参加企業とこれから決定するとしている。完成車は2012年2月末をめどに開発を進める予定。
また清水社長は化学メーカーが多く参画したことから、化学産業がEVにどのように貢献できるのかを研究する「電気自動車化学産業研究会(仮称)」を設立する意向を表明した。さらに、既存の自動車を同社技術でEVに改造する研究開発も新たにスタートすると明らかにした。これら2つについては先行開発車事業とは別に年度をまたがって継続的に研究するとのことだ。
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