特許データベースから浮かび上がる白物家電メーカーの勢力分布図をチェック。ハイアール、LGといった新興メーカーの動向も整理しておきたい。
皆さん、こんにちは。日本技術貿易の野崎です。前回の「巨大市場・中国をめぐる日米欧中メーカーの白物家電戦争〔前編〕」では、白物家電関連特許の出願動向から、中国が近年存在感を増している状況を見ました。今回の後編では実際にどのようなプレーヤーが中国白物家電関連特許を出願しているのか見ていきたいと思います。
前回の記事では中国の実用新案を含めずに日本・米国・欧州および韓国と比較していましたが、中国の出願動向を分析する上で実用新案を外すわけにはいきません。図1に各白物家電の直近10年間の特許(=発明)および実用新案の累積件数分布を示しました。
掃除機や冷蔵庫は発明の累積件数の方が勝っていますが、エアコン・炊飯器・洗濯機は実用新案の累積件数の方が上回っています。実用新案は中国地場メーカーが積極的に利用している出願形態ですから、エアコン・炊飯器・掃除機には中国メーカーが非常に積極的に出願しているのではないか? と推察できます。
それでは、白物家電ごとに特許(=発明)と実用新案の件数推移と出願人のランキングを見ていきましょう。
出願人(中国語) | 出願人(日本語・英語) | 累積件数(発明) |
---|---|---|
乐金电子(天津)电器 | LG電子(天津) | 1788 |
LG电子 | LGエレクトロニクス | 486 |
大金工业 | ダイキン工業 | 307 |
三星电子 | サムスン電子 | 292 |
三洋电机 | 三洋電機 | 208 |
松下电器产业 | パナソニック | 172 |
海尔集团 | ハイアール | 137 |
珠海格力电器 | グリー・エレクトリック | 106 |
青岛海尔空调器有限总 | ハイアール | 98 |
东芝开利 | 東芝キャリア | 90 |
出願人(中国語) | 出願人(日本語・英語) | 累積件数(実用新案) |
---|---|---|
珠海格力电器 | グリー・エレクトリック | 363 |
海尔集团 | ハイアール | 208 |
广东美的电器 | Media(美的集団) | 185 |
青岛海尔空调器有限总 | ハイアール | 158 |
广东科龙电器 | ケロン・エレクトリック | 130 |
大金工业 | ダイキン工業 | 90 |
乐金电子(天津)电器 | LG電子(天津) | 74 |
苏州三星电子 | サムスン電子(蘇州) | 68 |
海信(山东)空调 | ハイセンス | 67 |
广东美的集团 | Media | 63 |
発明ではLGエレクトロニクスの現地法人であるLG電子(天津)が圧倒的に多い件数を出願しています。韓国のLGエレクトロニクス本体の件数と足し合わせると、2000件を優に超えており、3位のダイキン工業との差は大きく開いています。中国勢ではハイアールや大手エアコンメーカー格力電器(グリー)が上位にランクインしています。
一方、実用新案ではグリーがトップですが、ハイアールやMediaなど中国家電大手メーカーが積極的に出願しています。
エアコン関連の発明・実用新案件数推移をみると、発明に関する出願が2006年以降頭打ちであるのに対して、実用新案は2009・2010年と急激に増加しています。中国地場メーカーの製品開発動向に注意を払う必要があるといえます。
出願人(中国語) | 出願人(日本語・英語) | 累積件数(発明) |
---|---|---|
乐金电子(天津)电器 | LG電子(天津) | 62 |
松下电器产业 | パナソニック | 42 |
福库电子 | CUCKOO | 13 |
美的集团 | Media | 12 |
广东格兰仕集团 | Galanz | 11 |
梁建华 | (個人) | 9 |
蓝治成 | (個人) | 5 |
三菱电机 | 三菱電機 | 5 |
林内 | リンナイ | 4 |
王永光 | (個人) | 4 |
出願人(中国語) | 出願人(日本語・英語) | 累積件数(実用新案) |
---|---|---|
美的集团 | Media | 33 |
广东美的集团 | Media | 26 |
上海奔腾企业(集团) | POVOS | 14 |
松下电化住宅设备机器(杭州) | パナソニック | 12 |
浙江苏泊尔家电制造 | Supor | 11 |
梁建华 | (個人) | 11 |
珠海格力电器 | グリー・エレクトリック | 10 |
谭湘 | (個人) | 9 |
湛江鸿智电器 | Hallsmart | 9 |
张正军 | (個人) | 7 |
炊飯器については全世界的に利用される家電というよりも日本や中国などアジア圏が中心になるため、必然的に出願件数規模も他の白物家電に比べると低調になっています。
主要プレーヤーはLGエレクトロニクス、パナソニック、Mediaなどの家電大手に限定されています。発明ではLGエレクトロニクスやパナソニックが、実用新案ではMediaが積極的に出願を行っています。
日本では高機能炊飯器が人気ですが、今後、中国でも高機能炊飯器が市場投入されるとなると、実用新案ではなく発明で出願・権利化される可能性もあります。
その意味で、現在炊飯器関連出願では実用新案が主流となっていますが、発明が増加傾向に転じたら高機能型市場投入の兆候といえるかもしれません。
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