さて、これらのRPや切削加工、射出成形サービスに必要な3次元データだが、CADベンダーは、バージョンアップのタイミングなどはまちまちなので、必ずしもDMSに合わせた新情報の提供があったというわけではない。
その中でもシーメンスPLMソリューションズは、2011年はSolid Edgeに絞った形で、最近リリースしたST4の紹介を行っていた。
シンクロナステクノロジがSolid Edgeに導入されてからバージョンを重ねたこともあって、かなり定着してきている。従来の履歴ベースの作り方とシンクロナステクノロジによる形状を直接操作する形で、双方のフィーチャーが共存できるようになっている。開発のステージによる使い分けや、カジュアルなCADユーザーにとっての操作もよりやりやすくなっている。
SolidWorksでは、新バージョンの発表はプライベートショウのときということもあって、新規の製品情報よりも、ステージにおいて主要なフィーチャーごとに顧客の事例を紹介することで、より機能が現実的にどのように使われるのかということを中心に紹介を進めていた。また無償の2次元CADとして話題になっている「Draft Sight」だが、展示会場ではこのMac版も展示されていた。
オートデスクは、春先に新たな製品ラインアップが紹介されたばかりであるが、DMSにおいては、同社がこの数年提唱してきている、デジタルプロトタイプのコンセプトに沿って、デジタルエンジニアリング、シミュレーション、ビジュアライゼーション、あるいはドキュメンテーションといった分野の紹介を行った。
CAEの最近のトレンドの1つがマルチフィジックスといった、異なる領域での解析を、より効率的に行っていくことであるということに変化は内容に思われた。しばらく前までは、構造解析と流体解析は、別々の専門領域として考えられていたのが、ベンダーを問わずその融合が急速に進んできているようだ。
例えば、アルテアエンジニアリングの「Hyperworks」では、「AcuSolve」というモジュールで流体解析を扱い、流体構造連成解析を進めることができる。従来の流体解析ソフトの場合には、有限体積法を使うことが多いのだが、AcuSolveでは有限要素法を用いており、計算の安定性、ロバスト性といったものを売りにしているほか、スケーラビリティといった面でも並列処理の規模にかかわらず、途中でパフォーマンスが落ちることなく、計算を進めていくことができる。
CAD同様にCAEも、全く新規の機能やテクノロジーを展開するというよりは、これまで別々に提供されていたものを統合して提供し、あるいはそれらのパフォーマンスを高めていく製品の紹介が目立っていたように思われた。
最近のトレンドとして言えるのは、DMSは同時開催の機械要素展に押されがちである。押されがちなことの1つの理由としては、かつてはDMSのスーパプレーヤーたちであった大手外資系CADベンダーの露出が押さえ気味になっているというのは否定できないと思う。
かつてのにぎわいは、3次元CADのテクノロジーの進歩が激しかったことと、ユーザーへの3次元CADの導入が急速に進行していたということであったと考えられる。それが一巡し、ある程度プレーヤーやそのシェアなども定まってきており、ユーザーにとってもベンダーにとっても、展示会の重要性が変わってきているといえる。
その意味でも急速に価格が下がりながら、高機能化ユーザビリティが向上してきているRPや3次元スキャンが目立ってきているように見える。
今回の取材で感じたのが、3次元のデータとRPなど実際にリアルな形につなげるトライアルは、ベンダーよりもむしろ進歩的なユーザーの方が先んじているようにも思えた。特にCADベンダーのブースでは、バーチャルな部分とリアルな部分についての融合のイメージがあまり湧いてこないことも多かった。どのベンダーもいままでの自社製品の枠を超えたソリューションや製品の具体的な提案をどのように進めることができるのかが、今後の展示会の面白さにつながりそうな気がした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.