設計者CAEお悩み相談室TwitterからあふれたCAEの本音語り(2)(3/4 ページ)

» 2011年07月06日 11時40分 公開
[小林由美MONOist]

南山氏がCAEを始めたきっかけ

――南山氏がCAEを始めたきっかけは、当時の上司だった。ある意味、それは負のモチベーションともいえるかもしれないが、きっと誰もが抱く可能性のある感情でもある。そして、この力がCAE推進の力になることもある?


南山2

僕はよく、「設計CAE」というものと、「数値計算」というものは、別物ですと言って、説明をします。上に対してもします。研究開発でNASAが使うのは、数値計算です。私たちが使うのは、電卓の代わりになる「こういうもの」です。だから「こういうふうに使いましょ」って。そうやって切り分けないと、シミュレーション――設計CAEとか、デザインCAEとかって、なかなか広まらないよねって。半分ぐらいは僕らにも責任があるとずっと思っている。

僕、昔の上司に、押しつけられて、押さえつけられて……、「お前の言っていることは全然なってない!」ってののしられて。結局最後は「なーに。俺の意見じゃんって」……。「(この上司を)やり込める方法ねーかな」って思って、シミュレーションを始めた。


(一同、笑い)

南山2

「これならやり込められるよね」っていうモチベーションがあるからこそ、設計者がつかんでくれるのかな、っていう部分があるかなって思ってます。皆さんのところに、そんな人が多ければ、この方法は有効だし、違うのであれば、また違うカードが必要なんだよね。


――それが有効である可能性はある。でも、さすがに全てのケースに当てはまるわけではない。

南山2

最近、僕自身は人のセミナーを聞くことはなくなったけど――どこかのセミナーや事例を聞いても、あまり役に立たない。それは、そのせいなんですよ。自分たちの状況って、みんな違うわけじゃないですか。100人の会社、1000人の会社。うちみたいな機械屋さん、部品屋さん。みんな、状況が違う。だから、各社さんで道具が違って、やり方違って、教え方も違って。本当は、そういうふうにやりながら、新しい方へ皆で向かっていかないと……。「設計者とシミュレーションが融合する時代」は永遠に来ないじゃないの。と、個人的にすごく思います。答えがないんだよね、極論は。


設計とは何ぞや

――前回は、設計の本質について考えることが大事だと話した。ここでは、もう少し具体的なこと、「設計の定義」について議論された。

tsunodako2

設計という言葉の定義を考えても、各社ばらばらじゃないですか。それが「CAEだけを同じにしよう」ってのが、そもそも無理である。


南山2

そう。そこ、もう一度考えるところからかな。そこ、考えてない人が多いんですよ、意外と。


sojo2

道具を入れたら何でも全部できちゃう、と思われている節が……。


南山2

「道具できましたー」「マニュアル作りましたー」「はい、お前らやれー」。


水出2

「設計者の定義」っていうのも難しいと思うんだけど。結局、設計者の定義って「どこまでが設計なのか」。例えば、自分の設計したことに対して、何も計算されていない。でも、例えば、電卓の手計算レベルでできて、自分の把握できる数値というのは、すごく限られているじゃないですか。だからシミュレーションというものがあって、それで「自分の設計したことが、やっぱり正しかったんだよね」って確認する。

CAEっていうのは、本当はそのために使わなくちゃいけないんだろうけれど、結局、世の中、自分の装置に対しても、「設計されていない」ことの方が大きいわけですよ。どこまで想定するのか、とかね。そうは言っても最低限、電卓にしても、CAEにしても、「自分の設計が本当に正しいです」って言えるぐらいのものじゃないと。


南山2

その設計者の定義って、難しい。どこまでにするか。うちの場合はね、設計者って、端から端まで見るんだよ。多分、どこもそうだと思う。


水出2

うちもそうだよ。「最後まで責任持つんだったら、お前がその数値を最後まで責任持て」って。そうなると、「勘と経験と度胸」で責任を持つのか。


南山2

もしくは、「もう少し高尚でグラフィカルな絵面を出すのか」って。


sojo2

「数字の裏付け」を持ってやるのか。


土橋2

例えばうちの装置でいうと、実装精度、位置決め精度でいうと、私が入社した当時(約20年前)は「±0.1mm(100μm)程度ぐらいあれば、いいね」なんていう時代だった。それがいま、どうかっていうと、「±3〜5μm」。それを出そうとしたら、サブミクロンレベルの動作が取れない限りできない。

20年前の自分が、「これ本当に大丈夫かな?」って思いながら、線をドラフターで描いたり、2次元CADで描いたりして設計したものができてくると、大体50%ぐらいの確率で、「あれっ?」てことが起こった。でも当時は検証しようがなかった。物ができ上がって、ランニングが掛かった状態から初めて実態が分かって、そこから徹夜が始まって、直した。


南山2

徹夜はしたよー。


水出2

したよネー。


南山2

いまは、しないけどー。


土橋2

そんだけ高度になっちゃったヤツが、(問題が起こって)「どうかな〜?」では済まなくなってきちゃっているから、水出さんが言ったように、もしそのときに、ちょっとでも確証が得れるんだったら、それで安心できる。「どっちにしたらいいんだろうな」って迷ったときは、(シミュレーションを)やってみて、いい方を選ぶというのも、1つのシミュレーションの使い方じゃないかなぁって。


sojo2

右行くか、左行くか。


土橋2

そこを設計者がやるのか。設計者は違うところに手を回して、ほかに頼むのか。それは各社の文化によるところじゃないかなって思うんですよねー。


南山2

まあ、一緒にやるって手もあるな。


土橋2

うちは“開発設計部”(※座談会当時:現在は「開発部」)の「3DCAD推進グループ」だから、設計の何物でもない感じなので、そういう環境はいいですよね。


南山2

僕もそれに近い立場。僕の名刺は「技術支援室」。僕は、“技術の支援”をする。シミュレーションは、「One of them」(その一部)。だから、シミュレーションの相談がきたときに、「設計がなってねぇ〜っ! 俺が全部、直してやるっ!」って――あ、直すことはしないけど……ヒントを与えて、ハイもう一度ってね。


sojo2

「設計案が悪いよ」って?


南山2

「設計案が悪いよ」とまでは言わないけど、「こうやれば、いいコストダウンになるよ」「こういうのもあるよね」っていう話をしながら。解析専任者と設計者、アウトプットや方向性が違うと思うんです。シミュレーションを広めたい人は、「シミュレーション」というアウトプットじゃないですか。設計者って、「設計」がアウトプットなんです。そこのベクトル感がずれていても、これがなかなかうまくいかない。そこをうまく、くっつけないと、この「設計CAE」「デザインCAE」なるものは成立しないんじゃないかな。


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