そこで提携関係にある高速道路保守会社の協力を得て、“風況”の良い高速道路サービスエリアに直線翼縦軸風車を設置し、運転データを実測する考えだ。「実用化に向けては、風況の悪い八王子キャンパスでの実験だけだと不十分。この秋にはサービスエリアに風車を設置し、強い季節風の中で実験を進め、同時にNEDOの2011年度募集に再チャレンジする」(水野氏)。
水野研究室の方式で直線翼縦軸風車を実用化するには、大きな課題もある。それは発電機のコストだ。前述した通り、風車の回転軸でダイレクトに低速駆動させながらも、高い出力の得られる発電機が必要なのだ。水野氏は「要求スペックを満たす発電機の市販品は60万円。太陽光発電の3.0kW機と同等のコストを目指す上ではネックになる。他の大学で効率の良い発電機が研究開発されているので、ジョイントも考えている」と話す。
さらに、発電事業向け大型機の開発はまだまだ先の話である。既に大型プロペラ風車では、翼直径80〜90mで発電容量2000〜3000kWが主流となりつつあり、海外では5000kW機も登場しているが、直線翼縦軸型はどこまで大型化できるのか。
水野氏は「直線翼縦軸型でも当然、将来的には2000kW機、3000kW機の開発も目指したい。マーケットは国内に限らない。世界には風況が良く、利用制約の少ない場所が多くある。プロペラ型に比べて多少効率で劣るとしても、低コスト性で十分競争できる」と自信を見せる。
直線翼縦軸風車が実用化され、「風車=プロペラ型」という人々の既成概念が変わる日も近いかもしれない(次回へ)。
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