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» 2011年05月09日 11時04分 公開

「歩行型ロボットは確かにカッコいい。しかし……」――お掃除から軍事用まで手掛けるiRobot社のロボット開発福島第一原発/被災地で活躍するロボット(3/3 ページ)

[遠竹 智寿子@IT MONOist]
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被災地に海外から提供されたロボットや偵察機とは?

 今回、PackBotが福島第一原子力発電所に投入されたことで、「日本のロボットはどうなっているのか?」という声を聞くが、日本で開発された緊急災害対応用ロボット「Quince(クインス)」も、福島第一原子力発電所に投入される予定で、現在その準備が進められているという。

 このQuinceは、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2010年度、戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクトで、特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)をはじめ、千葉工業大学、東北大学、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)、独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)が共同で開発したものだ。

 また今回、米エネルギー省から「Talon(タロン)」の提供も受けている。Talonは、Quinceとともに原発建屋内の調査を行うことになる可能性が高い。Talonは、DARPAの資金提供により、英QinetiQ社が開発した。同社は、警備、防衛用の機器やシステムを手掛ける企業であり、iRobot社のPackBotと同様、実際にイラクやアフガニスタンの戦場へも投入されている。

日本で開発された緊急災害対応用ロボット「Quince」 画像21 日本で開発された緊急災害対応用ロボット「Quince」(画像:東京電力 報道向け公開資料より)
英QinetiQ社が開発した「Talon」 画像22 英QinetiQ社が開発した「Talon」(画像:東京電力 報道向け公開資料より)

被災地周辺の水中/空中で活躍するロボットたち

 IRSとロボット支援探索救助センター(CRASAR)による合同チームの活動では、宮城県や岩手県の被災地湾岸部での、海中障害物の調査と遺体の探索のために、水中探査ロボット「SARbot(サーボット)」が使用された。開発元は、水中用の小型無人探査機システムの主要メーカーである米SeaBotix社である。

 また、東京工業大学 広瀬茂男 教授のグループが開発した「アンカーダイバ 3号機 AK-3」も、湾岸部の探索に使用された。もともと同機は、東京臨海救助隊が行う水中探査活動を支援する目的で開発されたものだという。

 一方、福島第一原子力発電所の空からの監視用には、高々度無人偵察機も導入されている。米軍から提供されたのは、英Honeywell社製の「RQ-16 T-Hawk」だ。ビール樽型をしたこの超小型無人機(MAV:Micro Air Vehicle)は、イラクやアフガニスタンでの爆弾探査用に作られたものだ。

英Honeywell社製の「RQ-16 T-Hawk」(1)英Honeywell社製の「RQ-16 T-Hawk」(2) 画像23、24 英Honeywell社製の超小型無人機「RQ-16 T-Hawk」は、赤外線センサーおよび高性能カメラ搭載し、小型・軽量(約7.7kg)。ガソリン駆動のタグテッドファンを利用してホバリングし、高度7000フィートまで上昇が可能

日本が実用性を考慮したロボットに乗り出したら、この分野のリーダーとなるだろう。しかし……

 ここで話をiRobot社に戻そう。アングル氏は、日本のロボット開発やロボットの未来についても語っていた。

 現在のロボット開発は、以前よりもソフトウェア部分の開発に掛かる時間が大幅に増えているという。「2年前には、約40%がメカニカルパート、約20%がセンサー周り、残りがソフトウェア開発といった割合だったが、現在ではロボット開発の約50%がソフトウェア開発といっていいだろう」とアングル氏。例えば、掃除用ロボットの場合、「バキューム技術を今以上に向上することよりも、いかにして人間との間のインタラクティブ性や安全性をソフトウェアで高めるかといったことが、より重要な要素になってきている」とのことだ。

 また、アングル氏は今後注力する分野について、「米国でも高齢化問題は加速化している。今後、家事用や医療介護用のロボットのニーズは高まってくるだろう」とし、さらに「高齢化や介護に関しては、日本がロボット開発をリードしていくのではないだろうか」と述べていた。

 そして、現在の日本のロボット開発についてアングル氏は、「日本はロボット開発においてどの国よりも優れた技術を持った国だと思う。もし、日本が“実用性”を考慮したロボットの開発に乗り出したら、この分野のリーダーとなるだろう。しかし、高度な技術や細かい制御にこだわり、これまでのアプローチを変えることがなければ、ロボットは単に高級品で終わってしまうのではないか。成功するか否かは、どこに価値を置くかで決まってくる」と警鐘を鳴らした。

 また、こうも語っていた。「歩行型ロボットは確かにカッコいい。しかし、私たちが必要としているのは、ファンシーなダンスを踊るロボットのデモンストレーションではありません。介護や皿洗いといった作業や、実際に危険な場所の調査を行うといった実務的な作業を考えたときに、夢で描いたようなスーパーヒーロー型ロボットが登場して、全てを解決してくれるといったことは起きないからです」(アングル氏)。

 来日会見が終わり、アングル氏と直接言葉を交わす機会があったので、「なぜ、家事の中でも、掃除用ロボットを選んだのですか?」(筆者)と質問したところ、「1つには、実務的なロボットとして、見た目に実証しやすいと考えたからです。その場で床がきれいになっていくのを見れば、ひと目で役に立つロボットだと分かるでしょう?」(アングル氏)と返ってきた。ちなみに、アングル氏個人は洗濯ものをたたんでくれるロボットがほしいそうだ。



 筆者は今回、アングル氏の話を聞いて、どうも、日本ではロボットに偉大な夢とカッコよさを求め過ぎてしまったため、高い技術力があるにもかかわらず、災害対応や医療・福祉分野などにおける実用・機能に、なかなか結び付かないというジレンマがあるのではないかと考えた。また、技術力の高さからか、機能や安全性といった部分の作り込みに非常に時間を掛け過ぎているような気がしてならない(もちろん、こうした面は重要ではあるが)。

 そして、日本におけるロボット開発をビジネスとして考えるならば、あらためて「ロボットに求める実用性とは何か?」「人間はロボットに何を求めているのか?」を考えてみるべきときなのかもしれない。

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