家庭用ロボット開発でも、1997年は同社にとって大きな転機となった。この年、米SC Johnson Wax社とパートナーシップ契約を結び、共同でワックス掛け用のマシン「Auto Cleaner(オート クリーナー)」を開発した。その際、デザインチームのエンジニア2人が「もっと手頃な価格で家庭用掃除ロボットを作れないか?」と興味を持ったことがルンバ開発の発端となったそうだ。
プロトタイプ製作から製品化までにおよそ5年の歳月を費やし、初代ルンバは2002年にリリースされた。ルンバは、同社が独自に開発した人工知能「AWARE(アウェア)」の搭載を始めとし、「これまで国家プロジェクトで培われてきたiRobot社の技術が最大限に注ぎ込まれて開発された」とアングル氏。そして、「ロボットに掃除をさせたいと考えたときに、人間型のロボットに掃除機を押させる必要はなかったのです」とも語っていた。
その後、ルンバは改良を重ね、さまざまなバージョンのモデルが日本でも発売されている。日本の消費者は大変厳しい目を持っているため、その評価を反映させることで、より良い製品作りにもつながっているそうだ。中には以下のような変わり種のルンバも登場している。
日本では未発売だが、米国では床磨きや雨どい、プールの底を掃除するロボットも発売されている。非常にユニークだが、人が嫌がるような手間の掛かる作業をこうしたロボットが肩代わりしてくれるのだ。
政府からの依頼案件や軍事用、もしくは民生用ロボットと、どちらに重点を置いているのかについて、「資金源として、それぞれに重要な要素となっている。技術レベルでは、地雷探知の技術がルンバに生かされることもあるし、逆にルンバの技術が軍事用に応用されることもある。大きな違いはどこかといえば、価格にあるだろう。軍や政府による依頼であれば、高度なセンサーやカメラといった質の高い部品・素材を使用できるが、民生用の場合には、消費者が購入可能な価格帯の中で製品作りをしなければならない」とアングル氏は語った。
iRobot社の軍事用ロボットは、どれも人命救助を目的としたものであり、決して攻撃用ではない。「政府も攻撃用ロボットには興味がないようだ。ただし、銃を持っている相手がいて、攻撃されるかどうか状況が分からない建物に、人間より先に入って状況を把握するといったシーンでは、現在の軍事用ロボットよりももっとアクティブなロボットを作ることはあり得るかもしれない」と語っていた。
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