世界初のソフトコンタクトレンズ型ホログラムディスプレイ、NICTがデモ品を披露CEATEC 2025

NICT(情報通信研究機構)は「CEATEC 2025」において、世界初となるホログラフィックコンタクトレンズディスプレイの実現に向けた取り組みを披露した。

» 2025年10月15日 07時45分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 NICT(情報通信研究機構)はCEATEC 2025(2025年10月14日〜10月17日、幕張メッセ)において、次世代AR(拡張現実)技術として注目されているスマートコンタクトレンズとなる、世界初のホログラフィックコンタクトレンズディスプレイ実現に向けた取り組みを紹介した。

 ホログラフィックコンタクトレンズの研究は、2024年に「革新的情報通信技術(Beyond 5G<6G>)基金事業 要素技術・シーズ創出型プログラム」に関するNICTの公募事業に採択されて以降、東京農工大学、徳島大学、早稲田大学、シチズンファインデバイス、シードと共同で進めている。同研究では、将来の幅広い普及を可能にするために、ソフトコンタクトレンズと同程度の薄さ、高い酸素透過率と含水性の両立を目指している。

 スマートコンタクトレンズとして、ホログラフィック技術を用いたコンタクトレンズの開発を目指している背景には「コンタクトレンズの中にディスプレイを入れるとピント合わせができない」という課題が挙げられる。「ホログラフィック技術はこの問題を解決するために必要な技術である。ホログラムを使うと立体表示ができるため、遠くに絵を出すことができる。われわれは、目のピント合わせができる位置に映像を出すことで、スマートコンタクトレンズの実現を目指している」(ホログラフィックコンタクトレンズの担当者)。

ホログラフィックコンタクトレンズのイメージ ホログラフィックコンタクトレンズのイメージ[クリックして拡大]出所:NICT

 展示ブースでは、コンタクトレンズの前に透明のフィルムを密着させて、実際にどのように映像が見えるのかを確認できる「技術デモ品」を展示している。中をのぞいて見ると、実風景に重なる形で赤い文字を見ることができる。

展示会場のホログラフィックコンタクトレンズの技術デモ品 展示会場のホログラフィックコンタクトレンズの技術デモ品[クリックして拡大]
技術デモ品には赤色の文字が映し出されている 技術デモ品には赤色の文字が映し出されている[クリックして拡大]

 「デモ品は位相型ホログラムを使用しているため、光の進路が変わらずに減衰しないことが特徴である。われわれはこのフィルムをホログラフィックデバイスとして扱っており、デモ品の全てをコンタクトレンズの中に内蔵する研究をしている。(同担当者)。

 コンタクトレンズ内に映像を映すためのバックライトには、厚さ0.076mmの超薄型レーザーバックライトの搭載を検討しており、ここに空間光変調器を組み合わせることで光を反射させてホログラフィー映像を表示させようと研究を進めている。また、展示ブースではホログラム表示に使用する厚さ0.1mmの表示デバイスも披露した。

0.076mmの超薄型レーザーバックライト 0.076mmの超薄型レーザーバックライト[クリックして拡大]
厚さ0.1mmの表示デバイス 厚さ0.1mmの表示デバイス[クリックして拡大]

 コンタクトレンズの電源については薄型固体電池を予定している。理由は搭載予定のディスプレイタイプが薄型液晶だからだ。自発光するLEDは一定の大きさの電流を流す必要があるが、バックライトの光を透過させる液晶の駆動には電圧を印加する必要はあるものの消費電流は極めて小さい。このため消費電力が極めて小さくなるという。「1mAhぐらいの容量の電池を入れるとなると、稼働時間は2〜3時間程度になる。ずっと使用するわけ訳ではないので、昼間は無理なく使用できると考えている。夜はコンタクトレンズ消毒をしながら充電をするといった使い方を想定している」(同担当者)。

 今後の研究開発については、まず3年程度でホログラムフィルムの試作品を作成予定である。また、スマートコンタクトレンズとしての研究開発を促進するために「スマートコンタクトレンズコンソーシアム」の設立を予定している。

 「ホログラムフィルムの試作機では、電池や通信に用いるチップなどを開発して、プロトタイプを作成するつもりだ。現在は研究の第1段階の2年目だが、約5年後にプロトタイプを完成させられれば。また、スマートコンタクトレンズのコンソーシアムはまだ日本にないため、関係者で集まって取り組みを進めていく予定である」(同担当者)

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