『第3回国際カーエレクトロニクス技術展』と『第2回EV・HEV駆動システム技術展』が、2011年 1月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催された。注目を集めるEV/HEV関連では、電動システムの展示だけでなく、EV用充電器の新製品も数多く見られた。
『国際カーエレクトロニクス技術展(以下、カーエレ展)』と『EV・HEV駆動システム技術展(以下、EV・HEV展)』では、電気自動車(EV)/ハイブリッド車(HEV)に関する展示が年々存在感を増している。本リポートでは、最初に、EV/HEVの中核をなす電動システム関連の展示について紹介する。
ゼットエムピー(ZMP)は、EVの開発プラットフォームとして利用できる「RoboCar MEV」を展示した(写真1)。サイズは全長2.4m×全幅1.0m×全高1.6mで、重量は約350kg。後輪に組み込んだ定格出力0.6kWのインホイールモーターによって走行する。同社が開発したステレオカメラシステムである「RoboVision」なども搭載している。
安川電機は、小型EV用の電動システム「YMEV」を公開した(写真2)。 SiC(シリコンカーバイド)デバイスや巻線切り替え技術を用いた「SiC-QMET」(『安川のEV用モーターシステム、SiCパワーモジュールを採用 』を参照)が、コンパクトカーやセダンタイプの車両向けであるのに対して、YMEVはモーターの出力がより小さくて済む、軽自動車やコミュータ向けのものとなっている。モーターの出力は最大 30kWで、総合効率は94%である。
富士電機システムズは、同社従来品と比べて約40%の小型化を実現した「直接水冷IGBTモジュール」を披露した(写真3)。同社の従来のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)モジュールは、IGBTチップを設置した基板と放熱を行う冷却フィンとの間を、銅ベース(ブロック状のもの)と放熱グリースで接続していた。これに対して、直接水冷IGBTモジュールでは、新たな冷却フィンを設計することにより、銅ベースと放熱グリースを省くことが可能になり、基板と冷却フィンは直接接続されている。
インターシルは、EV/HEVなどに搭載される大容量の2次電池モジュール向けの電池監視IC「ISL78600」を用いたデモンストレーションを行った(写真4)。デモに用いた4枚の制御ボードは、デイジーチェーンで接続されている。ISL78600の最大の特徴は、このデイジーチェーン接続に、ノイズに強い差動信号を利用できることだ。「このデモでは、競合他社の製品と異なり、デイジーチェーン接続に単純なツイストペアケーブルを利用できていることがよくわかるようにした」(インターシル)という。
指月電機製作所は、電動システムのインバータに用いる平滑用フィルムコンデンサを展示した(写真5)。容量は850μFで定格電圧は600V。低ESR(等価直列抵抗)、低ESL(等価直列インダクタンス)であることを特徴としており、完全なカスタム品となっている(形状、寸法、容量などの変更に対応可能)。ESRは、最小のもので5mΩである。
ルネサス エレクトロニクスは、EV/HEVの走行用モーター向けマイコンの開発品を展示した(写真6)。開発品の名称は「SH72AW」で、2013年春から量産を開始する予定である。最大の特徴は、従来、走行用モーターの制御マイコンとは別に用意する必要のあったレゾルバ‐デジタル変換(RDC)の機能を内蔵していることだ。このRDCの機能は、EV/HEV向けで高い実績を持つ多摩川精機のRDC IC「AU6802N1」をベースとして開発した。
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