中国企業に部品提供を始めた日本のサプライヤ変わりゆく中国の日系製造業(1)(1/3 ページ)

生産拠点から「市場」に変化しつつある中国の中で、日系製造業はどのような活動をしているのでしょうか? 現地から最新動向を紹介します。

» 2011年03月09日 16時00分 公開

はじめに

 北京オリンピック、上海万博を終え、日本の過去の歴史と同様に、発展と国際化を続ける中国市場。GDPもついに日本を抜き世界第2位に躍進しました。日本の倍のスピードで変化するこの市場に対して、中国に進出した日系製造業はどのような対応を目指しているのでしょうか。上海に常駐し、華北華南にも毎週のように飛行機で移動して、現場の声を聞いている筆者が、リアルタイムな情報を以下の5回テーマに分けて、レポートしていきます。


連載各回のテーマ(予定)

  • 第1回 中国自動車産業に部品提供を始めた日本のサプライヤ
  • 第2回 いまだ現地化に悩まされる中小日系製造業の工場
  • 第3回 多品種多量生産に即応できる生産革新システムとは
  • 第4回 いまや主力となった中国工場 中国から世界へ製品提供
  • 第5回 恐るべき中国製造業の技術進歩と世界戦略


 変化の激しい中国市場を象徴する業種は、自動車産業といるでしょう。日本国内の報道でも、中国に進出した日系の自動車部品製造業が、これまでの日系企業のほかに、現地の自動車関連企業に部品を提供し始めたことが伝えられています。

 日本国内では驚きをもって伝えられている情報かもしれませんが、当社は中国で生産スケジューラソフトウェアを販売するうえで、すでに日系工場の10倍のパフォーマンスのある中国系製造業に製品を販売していますので、こうした報道は至極納得のできる内容に感じます。むしろ、こうした動きは遅すぎたのでは、という印象さえ持っています。

 人間の命を乗せて走る自動車を構成する部品は、そのほかの業界の日本製品のように、中国では多少品質を落としてでも廉価に売り切るということができないという事情があります。

 先日、筆者が訪問した華南地区の日系自動車部品製造企業では、従来、台湾系の企業と合弁していた工場を現地企業に変更し、日本独資の工場は日系の自動車工場に部品を提供するという「切り分け」をしていましたが、昨今は、両工場の製造能力を調整しながら、両工場から日系・中系の区別なく部品を提供しているそうです。

 その背景には、日系の工場が持つ生産管理の技術、品質を作り込むための技術指導が中国の工場にも定着し、日本と同様の品質で部品を生産できるようになったことがあります。

 逆に複数の取引先からの仕事を受注し始めると、生産ラインはこれまでのように同じ取引先の部品を粛々と生産しておればよいという状態にはなりません。ラインを小ロット化するとともに、適切な段取り管理のもとに部品を納期に遅れることなく、取引先に提供することが必要となってきます。現時点では、部品価格がさらに廉価な中国独資の部品メーカーとの競争がありますので、品質だけでなく納期順守も大きなテーマとなっているようです。

中国と日本の市場成長の差 中国と日本の市場成長の差
(左列:中国 右列:日本 日本経済新聞 2010年1月22日)

急速に伸び続ける生産ラインの現実

 以下のスケジュール結果は実際に当社の顧客で自動車部品を製造している工場の現状をそのままスケジュールした結果です。自動車部品製造業に多い加工組み立てのラインでは以下のように中間在庫がたまる前に、前工程(加工工程)と後工程(組み立て工程)の非同期がみられ、いずれもが納期遅れになり、赤いアラートのガントチャートとなっています。

ある部品メーカーのガントチャート(例) ある部品メーカーのガントチャート(例)
前工程と後工程が非同期になっている

 解消を図るために、部品納期からスケジュールをバックワード、必要な中間部品をシミュレーションさせると前工程に関しては納期遅れがなくなりますが、後工程ではいまだに納期を割るロットが見られます。

納期からのバックワードと必要な中間部品シミュレーションの結果 納期からのバックワードと必要な中間部品シミュレーションの結果
後工程で納期割れがある

 以下のように、後工程を小ロット化し、納入頻度を上げれば納期遅れはなくなりますが、出荷検査に手間が掛かり、最後の工程にしわ寄せが残ります。

後工程の問題に対処する 後工程の問題に対処すると最終工程にアラートが出現する

 この時点で、検査工程の作業員の増員ないしは稼働時間を延長するといった、問題解決の道筋が見えてくるわけです。

海外の現地法人は? アジアの市場の動向は?:「海外生産」コーナー

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