日系部品メーカーでは、例えば、デンソーが上海カーナビゲーションソフトウェア開発センターを設立したり、アイシン精機が天津販社内で部品設計をスタートさせたるといったニュースが次々に発表されています。日本精工では昆山研究開発有限公司を設立しています。この発表に際して、同社では「中国市場の急激な成長に対応するために、中国にR&Dセンターを設立することにした。市場国にR&D拠点を置くことにより、我々は中国国内の自動車メーカーの要望、特に中国市場向け自動車モデルについての要望に対して、正確に応えることができるようになるだろう」とコメントしています。
ここから伺えるのは、同社が設立したR&D拠点が、日系以外の中国国内の自動車メーカー、特に中国地場メーカーをターゲットにしているということです。
当社製品のユーザーでもある河西工業が中国地場メーカーである奇瑞汽車と内装材の合弁会社を設立すると先日発表しました。こちらも、中国地場メーカーを顧客ターゲットにした動きであるといえるのではないでしょうか。中国国内では、外資系自動車メーカーの現地開発の動き、それに対応した世界の部品メーカーのダイナミックな変化が起こりつつあります。日本の中小製造業も、遅れをとらずに進出しなければ、スピードの速いこの国ではビジネスの土俵にすら乗れないかもしれません。
しかしながら、当社も中小ソフトウェア製造業です。中国ではネームバリューも、大きな広告宣伝費用を使えるわけでもなく、他社の事務所の1室をお借りすることから事業を始めてまいりました。
そうした経緯もあり、中小製造業が同様にリスクや赤字に対する恐れがあることは筆者にはよく理解できます。当社の経験からいえることは、1年は赤字を我慢しましょう。一芸に秀でた企業であれば、中国市場においてもその製品は必ず受け入れられるということです。事実、モノづくりで先行する自動車部品産業の工場であれば、1年間で独自のセールスラインを開拓することも可能です。当社もそのような経験をして現在の中国市場でのユーザーネットワークを築いてきました。
次回は、これまで当社がユーザーとしてきた日本の大手製造業の工場ではなく、日本同様に裾野が広く多数存在する中国での中小日系製造業の工場の問題についてレポートしていく予定です。中小であるが故に現地化を急ぎ、コスト削減を図らなくてはならない。しかし、大手に比較して資金・人材ともに不足している環境で現地化とシステム化に苦労・工夫している日系製造業の姿もご紹介します。
大手だけでなく、独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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