組み込み業界でも存在感が増す「Android」。ET2010会場では、模索段階を脱却し、“実用”へ向けた本格的な取り組みを数多く見ることができた
本格化する「Android」ビジネス。2010年は、Android搭載スマートフォンや電子書籍端末のようなスマートデバイスの普及・登場だけでなく、Google TVに代表されるようなAndroidベースのデジタル情報家電の存在も大きな話題となった。
組み込み業界でも昨年くらいからAndroid関連のビジネスを展開する企業・団体が徐々に増え、組み込み関連の大型イベントなどでもその存在感が増している。その様子は、2010年12月1から3日までの3日間、パシフィコ横浜で開催された下半期最大級の組み込み関連イベント「組込み総合技術展 Embedded Technology 2010(以下、ET2010)」でも見て取れた。
本稿では、ET2010で筆者が注目したAndroid関連の展示デモの模様を中心にお届けする。
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Androidを組み込みシステムのプラットフォームとし、携帯電話端末以外でのAndroidの普及・促進を行う一般社団法人「Open Embedded Software Foundation(以下、OESF)」は、「Android Steps Ahead at ET2010」をテーマに昨年(ET2009)以上の規模でET2010に出展。最大規模の15コマのスペースに会員企業から17社が集結し、OESFの活動や各企業におけるAndroid関連の取り組みについて披露した。まずは、OESFブースに出展した主な会員企業の展示デモの様子を紹介しよう。
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ET2010開催前の2010年11月29日にロードマップが発表されたAndroidの組み込みシステム向けディストリビューションの第3版「OESF Embedded Master 3(以下、EM3)」(補足1)に関して、System Coreワーキンググループに参加するアットマークテクノは、EM3を搭載した「Armadillo-440」や、OESFが提供する組み込みシステム向けAndroid開発環境「OESF Platform Builder(以下、OPB)」に採用されている超軽量版Android「Light Weight Android(以下、LWA)」を搭載したArmadillo-440を展示。
OPBとLWAは、EM3の前世代(現在一般公開中)である「OESF Embedded Master 2(以下、EM2)」から標準で組み込まれているコア技術である。開発者はEclipseのプラグインとして提供されるOPBを用いることで、ターゲット機器に必要なコンポーネント(機能)のみを選択し、ベースとなるLWAに追加することで独自のAndroid OSのイメージを作成することが可能となる。「通常のAndroidのOSイメージは約70MBytesくらいあるが、LWAであれば約30MBytesまで小さくすることができる。ターゲットの組み込みシステムに必要な機能“だけ”を選択し、カスタムのAndroidを容易に開発できる」と説明員。
なお、EM2のリファレンスボードとして採用されている同社の「Armadillo-500 FX」と同様に「Armadillo-440もEM3のリファレンスボードとして採用される見込み」(説明員)だという。EM3は、現在OESFの各ワーキンググループに提供されている段階で、2011年1月末に会員向けに公開、3月末に一般公開を予定している。
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デジタル家電やモバイル機器、車載情報端末の主要3分野でさまざまな製品開発や技術開発を行う日立アドバンストデジタルは、Androidに関連したソリューション展開にも力を入れている。
OESFブース内で同社は、Androidを利用した「車載向けセンターコンソール端末」の開発事例を紹介。車載情報端末にAndroidを採用することで広がる新たな可能性について提案していた。同社がこれまで培ってきた車載情報端末向けの豊富なHMI(Human Machine Interface)開発のノウハウやFlashを用いたリッチなUI(User Interface)を実装することで、直感的で分かりやすいインターフェイスをドライバーに提供できる。また、「GPS(Global Positioning System)と連動したナビゲーション機能のほか、車速やエンジン回転数など、ECU(Electronic Control Unit)からの情報をメーターに表示させたり、車載カメラの情報を表示させることも可能だ」(説明員)という。
さらに、同社が参加するOESF Market Placeプロジェクトの取り組みとして、「OESF Market Place SDK」(補足2)を用いて開発した「業務システム向けAndroidアプリケーション提供システム」に関する展示デモも行っていた。「GoogleのAndroid Marketではオープンにアプリケーションが公開されてしまう。業務用の専用端末に企業独自のアプリケーションを配信したい場合などには、“クローズドな”独自のMarket Placeが必要になる」と説明員は同システムの必要性を語る。
また、OESFブース内セッションでは同社 ビジネス推進本部 事業開拓室 第二開拓部 Androidプロジェクト プロジェクトリーダーの木村 隆一氏が登壇。「日立アドバンストデジタル Androidソリューションのご紹介」と題し講演を行い、同社のAndroid展開について紹介した。
同社はこれまでアプリケーション開発から試作機開発までAndroidを採用したシステム開発全体をカバーする取り組みを行ってきたという。また、同社主要分野の1つモバイル機器開発においても「北米向けのAndroid搭載スマートフォン開発に携わり、デバイスドライバの開発などを行ってきた」と木村氏。こうした実績とノウハウを踏まえ、今後Androidを活用したスマートTV、ホームサーバへの展開を視野に入れているという。
「Androidを搭載したスマートデバイスをデジタルTVと連携させ、TVに格納されているコンテンツを、DLNAを使ってスマートデバイスで視聴したり、EPGで番組予約をしたりすることを考えている」(木村氏)。
さらに「スマートハウスにおけるホームサーバとしてAndroid端末を使用することも考えている。各家電機器の情報の見える化や家電機器の制御のほか、ZigBeeを使い水道/ガスメーターと連携し、使用状況の収集・見える化も検討している」(木村氏)とのこと。
なお、同社はET2010の特別企画ゾーン「スマートエネルギーと組込み技術」でもAndroid搭載タブレット型端末の開発事例を紹介。「タブレット端末×Android=便利な生活」をテーマに、HEMS(Home Energy Management System)アプリケーションを搭載したAndroidタブレット端末をホームコントローラとし、エアコン、照明、テレビの制御や発電量/消費電力量の見える化を実現するデモを実施していた。
今回のデモでは、電力の見える化の仕組みを各家電機器側に組み込むのではなく、電力計を内蔵したPLC(Power Line Communication)モジュールを用いることで、電力を測りつつ、通信を行うよう工夫してあるという。そのため「後付けでも比較的導入しやすい構造になっている」と説明員。なお、本デモ環境では、旧:日立ソフトウェアエンジニアリング(2010年10月1日、日立システムアンドサービスと合併し、現在、日立ソリューションズとなった)が、春のESEC2010で披露したジェスチャ認識システムの技術も組み込まれているとのことで、ジェスチャ操作によるデジタルTVのオン/オフの実演も行われた。
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OESFのSTBワーキンググループに参加するKDDI研究所は、ケーブルテレビの多彩なチャンネルの視聴に対応し、アプリケーションでさらに使い方が広がる「Android搭載ケーブルテレビ対応STB」と題し、AndroidをベースとしたIPTV(Internet Protocol TeleVision)・ケーブルテレビ共通プラットフォームとケーブルテレビ受信チューナーを搭載したSTBの試作機を展示した。
「従来、KDDI研究所ではIPTVと呼ばれるインターネットでテレビが見られるようなSTBを開発していたが、今回の展示端末では日本ケーブルラボ運用仕様準拠の放送も受信できる、初のAndroid搭載STBを試作した」(説明員)。STBにAndroidを搭載することで、ケーブルテレビの視聴はもちろんのこと、Androidアプリケーションをテレビ画面で動作させることも可能。現在、視聴画面を全画面でしか表示できないが、将来的(今年度中)にはワイプのように画面の端に表示させるような改善も行う予定だという。
「STBとスマートフォンとの間でアプリケーション/サービスの連携が容易に行えるだけでなく、Androidの開発資産やノウハウを活用することでコスト・開発期間の削減が可能となるだろう」と説明員はいう。
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