組み込みでもAndroid解禁!? 模索から実用へET2010 Androidレポート(2/3 ページ)

» 2010年12月08日 00時00分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

Android端末によるセルフオーダーシステム

 OKIソフトウェアは、「Android端末によるセルフオーダーシステム 〜見えないドットコード『Grid Onput』の利用〜」と題し、デモシステムを展示。

 最近、居酒屋や回転寿司店などで見掛けるセルフオーダーシステムを、グリッドマークが提供する見えないドットコード「Grid Onput」(補足3)を読み取るペン型スキャナ「Gスキャナ」を接続したEM2搭載端末(アットマークテクノ Armadillo-440)と、同社のTCP/IPコンポーネント「Situator」を活用したPOSサーバを用い実現。紙のメニュー表に印刷されたGrid OnputをAndroid端末に接続されたGスキャナで読み取り、注文を受け付けるという一連の流れを実演した。

Android端末によるセルフオーダーシステムのデモ 画像12 Android端末によるセルフオーダーシステムのデモ
EM2搭載端末とGスキャナ、Grid Onputが印刷されてメニュー 画像13 EM2搭載端末とGスキャナ、Grid Onputが印刷されてメニュー
※補足3:Grid Onputとは、2mm角に約300兆のコードを付加できる印刷型ステガノグラフィ技術(見えないデータを埋め込む技術)。詳しくは、http://www.gridmark.co.jp/gridonput.htmlを参照のこと。


 「OKIデータのビジネスLEDプリンタ・複合機であればGrid Onputの印刷が可能。少ない部数でも印刷でき、コスト削減もできる」と説明員。なお、Grid Onputを付加したメニュー表の作成には、OKIデータの「グリッドレイアウタ」が用いられている。

 今回、あえて紙を用いた理由について説明員は「タッチパネルで実現するセルフオーダーシステムは存在するが、画面も小さくお年寄りなど抵抗感を持つ方もいる。今回紹介したソリューションであれば通常の紙ベースのメニュー表を見ながらでも簡単に注文することができる」と語る。


Androidは使いたいが、ITRONは捨てられない

 AndroidはLinuxベースなので、例えば、1msecごとにモータを制御させるようなリアルタイム処理が不得意で、産業機器や医療機器での活用には課題がある。

 この課題に対し、ウェルインテクノロジーは、ITRONやVxWorksなどのリアルタイムOS上にLinuxやAndroidなどの汎用OSを動作させることが可能な仮想化/マルチOSソフトウェア「Embedded-VRT」を提供。展示会場では、インテル Atomプロセッサを搭載した評価ボードにITRONとAndroidを共存させるデモを行っていた。

Embedded-VRTのデモ 画像14 Embedded-VRTのデモ

 Embedded-VRTによるマルチOSの場合、最下層(Host OS)にリアルタイムOS(デモではITRON)を配置し、その上の1タスク(Guest OS)としてAndroidを動かすため、仮にAndroid側で不具合が発生しても、Host OS側が優先されるため、シビアな応答性が要求される組み込み機器でも実用的に使用できるという。「今後、Androidが組み込み分野に急速に普及していく中で、必ず“リアルタイム性”が問題になる。Embedded-VRTは、こうした将来の課題を先取りし、その問題をカバーできる技術だ」と説明員はいう。

 また、産業機器や医療機器では、安全保証や品質保証を取得したITRONでシステムを構築しているケースが多いが、この技術であれば「認証済みのITRONを残しつつ、Androidの得意とするリッチなUIなどを簡単に取り込むことができる」(説明員)といったメリットもある。

 さらに説明員は「同じ性能の機器があった場合、UIが違うだけで、使いやすい=性能が良いという印象を持ってもらえるケースもある。産業・医療分野の組み込み機器でもUIを重視する傾向になりつつある」と同製品の将来性について自信を見せる。

NVIDIA「Tegra 2」を搭載したオリオン電機製のAndroid TV 画像15 NVIDIA「Tegra 2」を搭載したオリオン電機製のAndroid TV

 その横では、現在開発中のNVIDIA「Tegra 2」を搭載したオリオン電機製のAndroid TVの参考展示も行っていた。Android 2.2を搭載しているが、「実使用に耐え得る視聴環境を実現している」(説明員)という。詳しい発売時期などは明かされなかったが、最終製品へのAndroid適用が着実に進んでいる様子が見て取れた。

関連リンク:
ウェルインテクノロジー
Embedded-VRT

開発事例多数、Androidソリューション

 これまで、さまざまな組み込みOSを搭載するシステムにミドルウェアなどを提供してきたアイティアクセスは、現在、Android搭載製品のシステム設計コンサルティングやカスタムハードウェアへの移植、ミドルウェアの提供、検証・導入サービスなどのソリューションサービスにも力を入れているという。

Android搭載デジタルフォトフレーム、IPフォン 画像16 Android搭載デジタルフォトフレーム、IPフォン

 展示ブースでは、同社が提供するGUI(Graphical User Interface)ツール「UIE Player」を用いたデジタルフォトフレームや、組み込向けATOKを載せたIPフォンの展示デモを行っていた。また、Androidの移植事例として業務用のモバイルデバイスやSTBの実機展示も行われていた。

関連リンク:
アイティアクセス

Android 2.2搭載ロボットからクラウドサービスまで

 ナノコネクトは、Android 2.2を搭載したロボット「すーぱーどろいど君」の展示デモを行っていた。Android端末からBluetooth経由で各種制御、ジャスチャ動作やカメラ撮影などを遠隔で行えるほか、ロボット本体にアプリケーションを搭載させることで単体での動作も実現しているという。「ロボット側にAndroidを搭載することで、アプリケーション次第ではさまざまなサービスに対応できる」と説明員。

Android 2.2搭載ロボット「すーぱーどろいど君」 画像17 Android 2.2搭載ロボット「すーぱーどろいど君」

 また、同社が提供するクラウドを活用したeラーニングシステムの教育コンテンツを、PCからだけでなくAndroid端末でも視聴・学習できるように発展させた「Android対応クラウドサービスプラットフォーム」のデモを実演していた。「スマートフォンの普及により、ちょっとした空き時間や移動時間でも学習機会を提供できるようになった。端末側にデータを保持しているわけではないので、いつでもどこでも学習の続きができる」と説明員。

Android対応クラウドサービスプラットフォームのデモ 画像18 Android対応クラウドサービスプラットフォームのデモ。デモ機は「GALAXY Tab」

 デモ機として使用していた「GALAXY Tab」には、eラーニングコンテンツを視聴するプレーヤーアプリケーションが搭載されている。学習状況によって画面上のキャラクターをインタラクティブに変化・表示させるなど飽きない工夫がなされている。

教育コンテンツを表示させた様子 画像19 教育コンテンツを表示させた様子

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