日本企業の中国進出を支援してきたベンダ企業が見た中国本土の製造業事情とは? 日本企業、中国企業の違いや市場の変化などを事例を交えて紹介していきます。
当社は、システム開発の会社です。システムインテグレーションは、製造業をハードウェアの生産企業と見るなら、当社のようなシステムを開発する会社は、ソフトウェアを製造する製造業ともいえるでしょう。当社は、中国においても、日系・中国系を問わず、システム販売の代理店を開拓してきました。
これら中国本土にあるシステム開発会社の多くも、安いSE・プログラマ人件費という観点から、日本の親会社の仕事を請け負ってきた企業がほとんどです。一昨年のいわゆる「リーマン・ショック」を契機とした不況で、日本からの仕事が大幅に減ったことを機に、これら企業も中国内販という焦眉な生き残りの課題を突き付けられました。このように中国内販を目指した企業で障害となった点は、以下の2つに集約されます。
こうした状況の解決策としては、以下の点が挙げられるでしょう。
いずれの場合も、急ごしらえの業態変更であるため、従前から準備しているわけではありません。親会社の支援で、業態変更までの期間は資金援助をしてもらうしかありません。これができなければ、待っているのは倒産のみです。
ハードウェアを製造販売する日系製造業の中国工場も同様の課題を持っていると筆者は考えています。自社で強い製品を持たない中小企業は軒並み倒産し、生き残ったのは、資金に余裕のある大手製造業と市場性のある自社製品もしくは独自の高度な技術を持つ工場のみです。
先を見越して中国国内販売を計画してきた製造業は別として、多くの工場は、委託生産からの急速なシフトを強いられています。広い中国で、製品の販売ルートも持っていません。また、委託生産用に設置された製造設備を中国販売用に転用するには、法律上、中国販売用に再登録しなければならないルールがあります。加えて、貿易ではなく現地生産・現地販売となると、増値税に代表される各種の優遇税制もなくなってしまうというのが現実です。
以降では、特徴的な業態変更から苦労のうえ、成功しつつある、ある製造業企業について紹介します。なお、当社の中国での顧客の場合を例とするため、日本では株式上場企業の中国工場を中心に言及していきます。日系中小製造業の状況については筆者はあまりかかわっていませんので、言及は控えます。
大手だけでなく、独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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