ここまで、シックスシグマの概要から、プロジェクトの失敗例、各フェイズの障害と対応策についてご紹介させていただきました。この連載を通して見ていただいた読者の皆さまは、シックスシグマについてより具体的なイメージを持っていただけたかと思います。
業務プロセスから生じる問題を解決するのに有効な手法であるシックスシグマですが、これまでは「ばらつきをなくす」「品質を向上する」という点に焦点が絞られた手法が中心となっており、「無駄をなくす」「時間を短縮する」といった、業務改善に必ず登場するテーマに対応する手法はあまり盛り込まれていませんでした。
業務効率化が企業にとって重要度を占めている昨今の状況を反映し、10年ほど前から、GE(General Electronic)を先駆けとして、シックスシグマとトヨタ生産方式のエッセンスを基に体系化された「リーン」の手法が取り入れられるようになりました。これが「リーンシックスシグマ」――またの名を「リーンシグマ」といいます――です。
リーン手法として加えられた代表的な分析法の1つは、「バリューストリームマップ(価値流れ図)」と呼ばれるものです。
特定の製品(製品グループ)が、原材料が加工されてから顧客の手に渡るまでの全工程の経路と、各工程がどこからの指示で実施されるのかを示す手法です。この流れの「見える化」により、お客さまに対する付加価値を生み出している活動と、そうでないものが明確になり、非付加価値活動に潜むムダを削減することが可能になるという考え方をしています。
またリーンは、継続的なプロセス改善という点でも、従来のシックスシグマに不足していた部分を補完しています。今回ご紹介したCフェイズは、リーンの継続的改善の手法が非常に有効に機能する場面となります。
シックスシグマを導入している企業が相次いでこのコンセプトを持つリーンシグマの導入を進めていますが、リーンとシックスシグマが完全に連動し、一体化しているかというと、まだその途中段階にあるという見方が強いようです。最終的には、どのタイミングでどちらの手法を使うか、どう組み合わせていくかは、シックスシグマプロジェクトのリーダーや指導者の考えによる部分が大きいように思われます。
しかしながら、『顧客満足・顧客価値』というビジネス上の本質を最重要視しながら、時代に即して進化を続けるシックスシグマは、これからも有効な手法として活用され続けていくことでしょう。
以上、4回にわたりシックスシグマについてご紹介してまいりましたが、皆さん、本稿冒頭で示した3つの疑問について答えを持っていただけましたでしょうか?
シックスシグマを中心とした内容で進めさせていただきましたが、具体的な手法のご紹介の際には、通常の業務やプロジェクトで活用できるものを選んでおります。いずれも簡単に使えて、効果が実感できる手法ですので、ぜひご活用ください。
最後になりましたが、当連載を本当に多くの皆さまに読んでいただき、心から感謝申し上げます。ほんの1つでも、皆さまのお役に立つことができましたなら、この上なく幸いです。ありがとうございました!
→ 第1回 例題で理解する「そもそもシックスシグマって何だっけ?」
五葉コンサルティング株式会社 代表取締役 楊 典子
外資系コンサルティングファームにて大手自動車、機械、部品、消費財メーカーなど、多くの製造業のサプライチェーンマネジメント改革プロジェクトにて、コンサルティングに携わる。
外資系医療機器メーカーにてシックスシグマを学び、業務プロセス改革、シックスシグマの展開、経営品質管理を行う。その後、五葉コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役に就任。
【主な資格】物流技術管理士、SAP社SCM認定コンサルタント、シックスシグマグリーンベルト、アクションラーニングコーチ、中小企業診断士
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.