先週開催された宙博の2日目、慶應義塾大学環境情報学部教授で長年電気自動車の開発に携わってきた清水浩氏が講演し、電気自動車を中心に環境問題を克服し、さらに世界が豊かになる未来像についても語った。
宙博ビジネスデイ2日目の12月4日、慶應義塾大学環境情報学部教授で電気自動車の開発を30年にわたって続け、8月にはSIM-Driveという電気自動車関連の会社を立ち上げた清水浩氏の講演が行われた。清水氏は科学の発見とそれを基にした技術の発展によって、環境問題を克服し、さらに現在よりも豊かな未来を切り開くことは可能だというビジョンを示した。
清水氏はまず、2050年にCO2排出量を半減するということについて、これが日本人にとってどういうことなのかを説明した。
「いま日本人は1年に1人当たり10トンのCO2を排出している。アメリカ人は20トン、世界平均では4トンになる。世界で排出量を半減するということは1人当たり2トンになり、日本はいまよりも80%削減しなくてはならない。20世紀、われわれが豊かに暮らせたのは新しい技術が次々と使えたからで、その背景に化石燃料によるエネルギーを豊富に使えたということがある。従って常識的に考えれば生活をいまより8割切り詰めなくてはならないことになる。しかし、そんなこといやだというのはごく当然の反応で私もいやだと思っている。それに対して人類は新しい技術を生み出してきた。これを使うことによってわれわれは21世紀にもっと豊かな社会を作ることができると考えている」
その新しい技術は量子力学の発展によって分子の中身・振る舞いが分かることによってもたらされたが、清水氏はそれら多くの技術の中から「トランジスタ」「太陽電池」「ネオジム鉄磁石(現在最も強力な永久磁石)」「リチウムイオン二次電池」を挙げた。
「もし地球の全陸地の1.5%(アメリカ合衆国面積の約5分の1)に太陽電池を設置できれば、いまアメリカ人が使っているのと同じだけの裕福なエネルギーを世界70億人が利用できる。20世紀には先進国で十分なエネルギーが使える人々だけが豊かな生活を送れたが、その豊かな生活を70億人が送れるほどのエネルギーが太陽電池によって得られる。これが非常に大きな21世紀の変化だと思っている。ただ太陽電池は夜や雨の時は使えない。どこかに一時的に蓄えておく必要がある。そのためにリチウムイオン二次電池を利用する」
「今後のエネルギーの使い方としては、家の屋根や遊休地、砂漠に太陽電池を設置してリチウムイオン電池に蓄える。そしていままで電気を使ってきたところはそのまま電気を使い、熱を使っていたところは電気に、車を走らせるにも電気を使えばよいと考えている」
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