「21世紀を作っていくための基礎技術は日本が持っている」──宙博講演:電気自動車の未来電気自動車(2/3 ページ)

» 2009年12月08日 12時35分 公開
[佐々木千之,@IT MONOist]

電気自動車はガソリン自動車を超える

 「ではなぜ電気自動車を使うかといえば効率が良いから。電気自動車はガソリン自動車の約4倍効率が高い。技術の歴史は効率の悪いものから良いものに移ってきた。従って電気自動車は1つの必然性とい える。一方で自動車に求められるものは何かというと、広さと加速感と乗り心地で、その3つの価値が値段に見合うかどうかで車が販売されている。したがって 電気自動車を売るためにはこの3つの価値の大きさをガソリン自動車以上にしてやればよいと30年前に考え、これまで開発してきた」

電気自動車とガソリン車のエネルギー効率比較 電気自動車はガソリン車と比較して化石燃料を4倍効率良く使える

 ここで清水氏は自らが携わった9台の電気自動車について紹介した。

 「1991年に『IZA(イザ)』という車を東京電力が中心となって作ったが、最高速度は時速176キロ、満充電で270キロ走行できた。この段階で電気自動車はガソリン自動車とだいたい同じくらいの性能まではいけたが、それを超えるものではなかった」

 「2005年の『Eliica(エリーカ)』はリチウムイオン電池、ネオジム鉄磁石、非常に性能の良いトランジスタを使った速度コントローラーを組み合わせた。新しい技術を取り入れて、これまでのガソリン自動車とは違った構造の電気自動車になった。最も特徴的なのは車輪の中にモーターが入っている『インホイールモーター』であること。これによって効率が良くなり、車室も広くできて構造が単純になる。車はフレーム構造が支えているが、私たちは単純な構造のフ レームを作って空いた空間に電池を挿入した。これによって電池のための場所を別に用意する必要がなくなり、重い電池を下に置いて重心が低くなったことで安定性が増して乗り心地が良くなる」

4人乗り高性能セダン「Eliica」 4人乗り高性能セダン「Eliica」
清水氏が開発した電気自動車システムの概要 清水氏が開発した電気自動車システムの概要

 「Eliicaは市販されている大型乗用車メルセデスベンツSクラスとほぼ同じサイズ。タイヤ1つ当たり100馬力のモーターを使っているので8輪で800馬力ある。これは最高時速370キロを達成したが、電気自動車でもこんな性能が出るんだということを多くの人に知ってもらうことが必要だと考えてこんな車を作った。加速はポルシェ911ターボを上回る。ガソリン車はギヤチェンジしながら加速しなければならないが、Eliicaはギヤがなく連続して加速できる。そのためプロドライバーでなくてもアクセルを踏むだけで高性能ガソリン車を超えるスピードが出せる」

Eliicaとポルシェ911ターボの加速性能比較 Eliicaとポルシェ911ターボの加速性能比較。Eliicaは時速100キロまで 4.1秒、時速160キロまで7.0秒で加速できる

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