次に、建設機械、建機の製造・販売を行っているコマツにおける、グローバルでの製品情報管理に向けた取り組みが紹介された。登壇したのは、コマツ e-KOMATSU推進室 デジタルエンジニアリンググループ横堀達也氏だ。
コマツも世界各地に生産拠点を持つが、従来はそれらの連携業務そのものが非常に煩雑で、手間の掛かるものだったという。
このため、設計・開発部門の効率化をはかりつつ、タイムラグなく製品を量産するために、各拠点と連携した共同開発を実現するインフラ整備の必要性が高まっていた。また、海外現地法人で量産体勢が整うまでのリードタイムが大きくなってしまうことが問題となっていた。加えて、BOMの統合が日本国内のみで実施されていたため、「海外の現地法人での部品情報の更新にタイムラグが発生してしまうだけでなく、設計BOMと製造BOMも分散してしまっていたため、1製品ごとの原価管理が非常に困難だった」という。
コマツは、ENOVIAをベースに、独自に「G-DMS」と呼ばれるシステムを構築。製品仕様から、設計BOMのほか、設変情報や原価情報も一元的にデータベース化、単一のシステム上ですべての情報を管理できる仕組みを構築した。
これによって、世界各国に点在する設計者・製造スタッフが同一のデータリポジトリから情報を取得できるようになっただけでなく、SAPやInforなどが提供する会計システムなど基幹系業務ともコネクタブルなシステムが実現した。
これらのシステム改革が実現したことで、コマツの生産体制は大きく変わった。「リードタイムが短縮し、機動的な在庫調整も可能に」なったのだ。さらに、インフラが統一されたことで、日次・月次などでのレポーティング業務がスムーズに実施でき、ほぼリアルタイムの情報を任意のタイミングで取得できるようになったという。
横堀氏によるとENOVIAを選定する際、過去の製品設計などの情報も随時蓄積できるため、新規案件への対応はデータの蓄積が進むほどに効率化が計れる点も大きなポイントとなったという。
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ENOVIAはグローバル展開を行っている企業で特に大きな効果が期待できるソリューションだ。同社では、従来から航空・宇宙産業などで多くの実績を持っているが、今後の展開としては、これらクリティカルな場面向けのシステム構築で培われた堅牢なシステムづくりのノウハウを、ハイテク・アパレル・消費財・医薬品業界など、他の業態の企業向けにも展開していくという。
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