P&Gが全世界で導入する「CSS」システムの秘密モノづくり最前線レポート(9)(1/3 ページ)

機械産業だけでなく一般消費材業界でもPLMシステムによる効率化が進んでいる。グローバル市場で優位に立ち続けるための戦略的IT投資とは?

» 2009年06月16日 00時00分 公開
[原田美穂@IT MONOist]

 セッション冒頭では、ダッソー・システムズENOVIAバリュー・チャネル担当バイス・プレジデントであるAlex Zeltcer氏が登壇。製品製造工程の合理化、サプライヤとの戦略的協業支援のほか、特にITコストやシステムの複雑さを低減し、より高い付加価値を製品に提供するENOVIA導入のメリットを語った。

BlackberryのRIMもENOVIAをインフラに採用

 ENOVIA V6は、設計BOM、製造BOM、サプライヤ情報、バリエーション情報など、従来であれば拠点ごと、部門ごとに管理されることの多かった情報を1つのシステムに集約する仕組みを提供する。このシステムを導入する利点は、情報が瞬時に各部門で共有できるため、リードタイムが短縮できるという点だけでなく、サプライヤ情報の共有、調達コストの効率化や、技術情報の共有による開発コストの削減など、製品戦略全般が劇的に効率化するところにある。

ENOVIAバリュー・チャネル担当バイス・プレジデントであるAlex Zeltcer氏 ENOVIAバリュー・チャネル担当バイス・プレジデントであるAlex Zeltcer氏

 特に後述する事例として登場するような海外拠点を持ち、世界各国で製品展開をしている企業にとっては、ENOVIA導入によるコスト削減効果は巨大なものとなる。

 例えば、日本でも発売されているスマートフォン「Blackberry」の提供元として知られるカナダのResearch In Motion(RIM)では、ENOVIA Central製品群を採用、SolidWorks/SAP/Mentergraphicsなどと統合したシステムを構築し、世界各国に点在する設計拠点をENOVIAを使って統合している。

 また、2008年のデトロイト・モーターショーで話題となったプラグインハイブリッド車「KARMA」の製造元であるFisker Automotive(フィスカーオートモーティブ)では、CATIAとENOVIAにより、3拠点間の開発環境を統合させ、さらに関係するサプライヤとのシステム統合を強化しているという。

1つのWebシステムを経由して全世界がリアルタイムにつながる

 昨年発表されたENOVIA V6で統合されたシステムには、Webクライアント経由でアクセスする。ネットワークに接続できる端末とWebブラウザがあれば、世界中のどの拠点からでも自分専用の業務ポータルから必要な情報にアクセスが可能だ。

 例えば日本と東南アジア、欧州のような異なる拠点間の設計エンジニアどうしでの共同作業なども、Webブラウザ経由であたかも臨席の同僚と相談しながら作業しているかのように業務を進められる。その作業進ちょく状況は、マネージャ側でも随時確認できる。また、サプライヤなど、社外の提携企業向けにもデータの出し分け制御を行えるため、調達コストの低減を含めたスムーズな情報交換が可能だ。この間のすべてのデータのやりとりを、人の手を介さず、1つのシステム上で実現しているのがENOVIA V6だ。

 ここでは、MONOist読者に親しみのある企業に絞って紹介したが、この他にも、医療系メーカーである Abbott Laboratories、化粧品メーカーAVONなど、ワールドワイドで製品開発・提供を行っている企業の事例が多数紹介された。

 しかし、このセッションで最も注目されたのは次の2事例だろう。1つは知らない人はいないと言っても過言ではない巨大一般消費財メーカー、プロクターアンドギャンブル(以降P&G)、そして、建設機械、重機械メーカーとして世界各地に拠点を持つコマツである。

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