2009年6月24〜26日の3日間、東京ビッグサイトで「第20回 設計・製造ソリューション展」が開催される。本稿では、3次元プリンタ出展企業への事前インタビュー第1弾として、アルテックの展示概要を紹介する。
昨今、展示会に出展すれば必ずといって良いほど注目を集めている3次元プリンタ。3次元CADを使用している製造業の設計現場ではもちろん、デザイン、建築、医療などの分野を中心に、導入が進んでいる。
3次元プリンタは、特別な機械操作は必要なく、一般的なプリンタで紙に印刷するような感覚で使用でき、PCで作成した3次元情報を転送すれば、わずか数時間で、画像1のような造形モデルが完成する。用途としては、上流の設計段階で形状確認のために使用したり、作成した造形モデルそのものを使用するなど、業種によってさまざまだ。
なお、現在日本で販売されている3次元プリンタはいずれも外国製だが、各社代理店経由で購入することができる。
@IT MONOistではこれから数回に渡り、DMS 2009に3次元プリンタを出展する企業の事前インタビュー記事を予定している。造形方法や材料の種類、最大造形サイズなど、各社得意とするスペックが異なるため、今回の事前記事は、DMS 2009で実際に複数社の3次元プリンタを見ながら、業種/用途に合ったものを選択する際の参考にしていただければ幸いだ。
第1回はOBJET(イスラエルの企業)の3次元プリンタを出展するアルテックの展示内容を紹介する。
アルテックは、OBJETの3次元プリンタ3品種(Alaris30/Eden260・500/Connex500)を出展する。中でも注目したいのが、2009年1月1日から販売開始したAlaris30だ。
「OBJETの3次元プリンタは非常に精度が良く、その分価格が高いので、車でいえばメルセデス・ベンツのようなもの。これまで1番安いものでも1200万円と、一部の大企業しか購入できないという現状だった。Alaris30は、従来の精度はそのままに、卓上で使用できるエントリーモデルとして、548万円というお手ごろ価格になっている」(アルテック 産業機械事業本部 オブジェット事業部 課長 奥田 哲太郎氏)
OBJETの3次元プリンタは樹脂を薄く積層し、それを繰り返すことで造形していく。1回当たりの積層の厚み(積層ピッチ)がAlarisで28μ(ミクロン)、Eden・Connexで16μまたは30μと、非常に薄いのが特長だ。
「例えば丸い形状のものを造形しようとしたときに、1つの層の厚みが分厚いと、周りの部分がカクカク(段差)のエッジになってしまう。OBJETの3次元プリンタは、高速モードで使用しても30μの薄さを再現でき、非常に滑らかな造形ができる。触っていただくと分かるが、表面もツルツルしている」(奥田氏)
なお、OBJETの造形工程については、アルテックのWebページに動画が掲載されているので、そちらをご覧いただくと、よりイメージしやすくなっている。
「作成したい3次元モデルを横にスライスすると、モデルの部分とサポートの部分がそれぞれくっきりと分かれる。そこにインクジェットプリンタと同じ要領で樹脂とサポート材を吹き付けるというのをひたすら繰り返している」(奥田氏)
OBJETの3次元プリンタのもう1つの売りは、作成する樹脂のバリエーションが多いことだという。また、Connexに関しては、2種類の材料を使用した2色成形も可能にしている。
「材料の種類は、ベースで8種類。半透明のものやゴム状のものまである。そのほか補聴器を造形する際の専用材料として1種類用意している。Connexでは、ソフトウェアの方で自動に配合率を計算し、異なる材料を組み合わせた20種類以上のパターンで作成できる。やはり最終製品に近い材料で作りたいというお客様のニーズがあるので、今後もバリエーションを増やしていきたい」(奥田氏)
「今回、これまで高価なイメージのあったOBJETの3次元プリンタをコンパクトかつ安価で販売開始したことで、これまでなかなか手が出せなかったお客様も含めて、3次元プリンタが広く提供していくきっかけになればと考えている」(奥田氏)
販売カテゴリとしては、家電、車、携帯電話、容器、オモチャなど、デザインが関係する業種すべてをターゲットとしおり、歯科、医科、学術用途にもついても今後提案を進めていくという。
2007年からOBJETの代理店を務めているアルテックだが、数ある3次元プリンタの中で、なぜOBJETを選択したのだろうか。その理由を伺ってみた。
「現在、あらゆる業種でフロントローディング型に移行している中で、設計段階である程度(製造時に)どういうことが起きるのかを確認しておきたいという要望が多い。例えば海外に生産工場を構える企業などは、いざ生産ラインに流したときに不具合が起こっても海外の現場では対応が難しい」(奥田氏)
「ではそうした場合に何が求められるかというと、やはり精度。モノづくりというのはいろいろなパラメータがあると思うが、必ず通るのは精度。たった1つのRを決定するために何人もの人が話し合って、決定する。ほとんどの製品というのが、そういった協議のもとで作られていると思うが、そのときにモノ(造形モデル)があって、手で触れて確認できるというのは、その後のリスクを減らすことにもつながる。OBJETを選んだのは、その“精度”が優れているから。実際に購入されたユーザーさんからは非常に喜んでもらい、長い付き合いが続いている」(奥田氏)
なお、アルテックでは、OBJET専用ソフトウェアとの互換性を持った3次元ビュアー「STL Explorer」や帳票ソフト「Account reporter」もシーエフシーと共同で開発しており、こちらもDMS展に展示するという。
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