それでは、皆さんが使っている材料のヤング率やポアソン比、それに降伏応力をどのように調べればいいのでしょうか。
それはズバリ、「その材料を仕入れている(販売している)メーカーに聞くこと」です。20年くらい前は、データを出し渋る会社もありましたが、昨今ではISOの関係なのか、詳細なデータをそろえて、皆さんからの質問に準備している会社も多くなってきています。材料メーカーにとってみれば、皆さんはその材料を使うお客さまですから、当然、材料の定数を尋ねる権利はあると思います。
材料メーカーから提供されるデータが、その材料を使って作る部品の設置環境と合致しているとは限りません。こういう場合は部品や製品の設置環境に合わせた実験を行って、会社が責任を持ってデータを採取しなければなりません。材料実験は一般的に大規模な実験装置が必要であるばかりでなく、実験の方法にさまざまなノウハウがあります。材料実験を代行してくれる会社もありますので、委託するという方法もあります。
また公的機関のサイトを利用することも1つの方法ではあります。しかしながら「プロのためのサイト」という感じで、目的の材料を探すのに一苦労します。PDFのダウンロードは有料です。
機械工学便覧にも、主な材料のヤング率、ポアソン比などが整理されています。ご参考までに。
「ちょっと解析で新しい材料を検討してみたいだけなので、そんなに正確な材料定数は必要ない」という場合があります。
そういう場合にインターネットを使わない手はありません。例えば、「アルミニウム ヤング率」と入力し検索すれば、相当な数で引っ掛かってきます。後は、皆さんの検索技術にお任せするとして、ここで頼りになるサイトをさらに2つ紹介させていただきます。
まずは海外のサイトから、「MatWeb」を紹介します。「Mat」とは「Material」のことで、意味は「材料」ということです。英語のサイトですが、いくつかの解析アプリケーションのメーカーなどが協賛していて、会員登録すれば、無料で材料データをPDFやExcelシートでダウンロードできます。さらに数値から材料を逆引きできたり、単位変換できたりします。完成度が高いサイトです。
そして日本のサイト代表は、東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻の技術情報のQ&Aページです。このサイトは2008年の3月をもって閉鎖されたサイトですが、素晴らしい活動の足跡の1つです。サイトの閉鎖こそされたものの、検索サービス自体はいまだ健在です。材料定数の質問には、その出典とともに丁寧に答えてくれています。
・東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻の技術情報のQ&A
あなたの探している材料の定数が見つかるかもしれません。ぜひ利用してみてください。
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次回はいよいよ最終回です。これまでの回を振り返っていきます。(次回に続く)
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