仮定を挿入し、論理の筋をチェックしたら、対立の結果生じている行動や考え方(中核問題)を加えます。第1回の連載で紹介したジレンマにどう対処しているかというパターンを思い出してください。妥協や二者択一によって実際に起きている行動を中核問題として記述してやればいいのです。
妥協や二者択一によって生じる中核問題のパターンは、大きく分けると次の2つがあります。
対立によって混乱が生じている場合 この場合、その混乱や実際に取っている「第3の行動」を中核問題として描写します。例えば第1回で紹介した「生産管理の1日から20日と21日から月末の妥協」がこれに当たります。
多くの場合D(またはD')を行っている場合 この場合には簡単で、「多くの場合D(またはD')を行っている」を中核問題として加えてやればよいのです。
中核問題が抽出されたら、図6のようにDおよびD'から矢印をつなぎます。そして「もしDかつD'ならば、そのときは〔中核問題〕である」と原因と結果のロジックで読み、筋(論理性)をチェックします。さらに必要ならその理由を加え、DおよびD'とともに矢印を中核問題へつなぎます。「もしDかつD'かつ〔理由〕ならば、そのときは多くの場合D(またはD')を行っている」と声を出して読んでみて筋(論理性)をチェックします。この図が現状構造ツリーの基礎部分(ボトム)となります。もうお分かりのようにこのボトムは過去のジレンマと、その結果取っている行動をすべて表したものなのです。
中核の雲(クラウド)を基に、現状構造ツリーのスタートポイントを作成したら、中核問題から1つずつ好ましくない現実(表1)をつないでいきます(図7)。
項目 | |
---|---|
納期遅れが多発している | |
売り上げが上がらない | |
さらに値引きを要求されている | |
欠品が増えている | |
利益が減っている | |
売れそうな顧客に値引き攻勢を掛けている | |
機会損失が多発している | |
納期が月末に集中している | |
過剰在庫が増えている | |
表1 好ましくない現実(UDE)の一覧 |
クラウド(雲)を変形させたボトムが過去のジレンマと過去の行動を表しているなら、その結果として現在われわれが感じている症状と関連があるはずです。現状構造ツリーはその関係を検証し現状を可視化するツールなのです。
「もし○○ならば……そのときは△△している」という原因と結果の関係(因果関係)を見て、最も中核問題から近いUDEを選び矢印で結びます。因果関係が遠いと感じるならば、中間にそのUDEを引き起こしている「行動」や「方針」などの事実を推理して必要なボックスを挿入します。さらに原因が不十分であれば仮定を置いて矢印をつないでいきます。最初のUDEがつながったら次に近いUDEを選び、同様につないでいきます。これを繰り返し、中核問題とすべてのUDEがつながっていること、すなわちすべてのUDEが中核問題から発生していることを確認します(図8)。
場合によっては、ツリー上部にあるボックスから下部にあるボックスへループ状につながることがあります。また、UDEを1つずつつないでいくことが基本ですが、つなぎ始める前にUDE同士の大まかな因果関係を確認しておくことも効果的です。
TOC思考プロセスでは、ボックスそれぞれの関係を明確にしながら、全体像を把握していきますが、箱をつなぐそれぞれの関係には、次の2つがあります。
「もしAならば、そのときはBである」というように、原因と結果の関係を表します。ボックスを矢印でつなぐ際は、AからBに向けてつなぎます。複数の要因が合わさって結果が生じる場合、すべての要因をそろえなければなりません。このロジックは、現状ツリー、未来実現ツリー(次回の連載で説明します)などで用います。
「AであるためにはBという行動を取らなければならない」というように、目的とそれを達成するために必要な条件との関係を表します。ボックスを矢印でつなぐ際は、BからAに向けてつなげます。因果関係ロジックでは複数の要因を挙げましたが、必要条件ロジックでは厳密にすべての必要条件をそろえる必要はありません。このロジックは、「雲:クラウド」などで用いられます。
◇ ◇ ◇
次回はもう少しロジックについて説明し、あらためてジレンマの解き方について考えていきたいと思います。
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