DBRの仕組みを構築し小ロット生産体制が整ったら次のステップです。この仕組みを支えるシンプルな仕組み、層別生産をご紹介しましょう。図4のように製品を出荷数量別に並べ、量の多いものからAランクを日当たり生産、Bランクを計画生産、Cランクを受注生産に区分けします。
工場が利益を出すためには、安定した稼働が望ましいのですが、一方で顧客のさまざまな注文にもきめ細かく応えることが求められます。その解決策として生産量に応じて管理方法を変更し、効率とバリエーション対応を両立する必要があるのです。
この仕組みによって中央に在庫を集中させれば、当然予測の精度は非常に高くなり、工場からの在庫補充もスムーズにいくようになります。しかし一方で、工場からすべての製品を直送しなくてはならず、とてつもなくコストが掛かると予想されます。この問題をどう考えたらよいのでしょうか。
中国、インド、ベトナムなどの海外生産が広がる中で国内生産を守るためには、中央の物流拠点から欠品なく短いリードタイムで直送できる物流を組み立てる必要があります。これまでのように地域や販売チャネルごとに製品在庫を持つ旧来型の物流が、大量の在庫を抱え経営をおかしくする元凶となっているのです。また物流そのものも、直送トラック便に頼り切る必要はなく、路線便、宅配便、鉄道やフェリーを組み合わせて物流システムを構築し、これまで費やしてきた倉庫費用や横持ち費用(倉庫間の移送費用)などと顧客サービスの向上による効果をトータルで考えて、安く速く顧客に届けられる仕組みを作ればよいので。
見てきたようにサプライチェーン上ではサバが幅を利かせ、享受できるはずの利益をむしばんでいます。本来、自社の製品やサービスを購入してもらうためには営業や生産、開発などの機能が密接に連携しなければならないはずです。しかし多くの企業では、それぞれ自分たちに与えられた「責任」を全うしようと、それぞれが勝手に活動を続けています。しかし、いかに責任感から出たものであろうとも、個人で持っている限り「サバはサバ」なのです。これまで紹介してきたような仕組みを構築してサバをうまく活用し、企業に永続的な利益をもたらすことが可能です。
ポイントは「サバは集めて管理する」、いい換えれば、個人で持っていたサバを1カ所に集めて「バッファー」として管理してやればよいのです。また1カ所に集めることで、管理の重点になる部分を「見える化」でき、経営資源を制約に集中的に投入することが可能になります。
市場や顧客は、他社も含めた同種の製品やサービスに対して品質・納期・コストなどに多くの困りごと(TOCではこれをUDE:Un-Desirable Effect、好ましくない事実といいます)(注2)を抱えています。もしこういった状況が発生しているとすれば、顧客の不満や困り事のもとになっている核心的な原因に、ライバルメーカーも対応できていないことを示しています。顧客の抱えている問題は、決して小さいものではありません。それらの問題を解決できれば、大きな利便性が生まれ、競争優位を確立できます。
もうけ続ける仕組みを作るということは、これまで紹介してきた仕組を「提案」という目に見える商品として提供し、顧客の問題を解決し、それによって自社ももうかるという顧客とのウィン・ウィンの関係を創造することなのです。
注2:好ましくない事実(UDE:Un-Desirable Effect) ビジネスにおいてもプライベートでも、私たちは日常的に問題を抱えています。例えば頭が痛いという「イヤな症状」(UDE)は、その症状を引き起こした感冒(風邪)という原因の結果という因果関係があるのです。
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次回は本連載の最後としてTOC流「創って造って売る」仕組みの作り方を、著しい成果を挙げている企業の事例を通して考えてみましょう。
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