実際に強度解析が必要な部品は、試作コストが掛かる大物部品が主ですが、ここでは分かりやすいように簡単な形状の部品を例に挙げて説明します。図5に示すようにポイントAにP(N)の荷重が掛かり、穴1と穴2でネジ留めする部品があるとします。
穴1と穴2は強度解析を行うときに、条件設定として部品を拘束するためにモデリングしておく必要があります。また穴3も強度解析するうえで部品の強度に大きく影響を与える形状であるため、モデリングを完了しておく必要があります。
しかし、部品の端面に付けたR形状は強度解析に対する影響が小さいために、モデリングされている必要はありません。従って、この部品の解析モデルは図6のようになります。
このように、CAEが計算をしてくれるからといって、強度計算において材料力学の知識がなくてもいいわけではありません。より効率的に設計業務を進めるうえでも、設計の基本である各種工学の知識は身に付けるよう努力しましょう。
キーワード:相対評価と絶対評価 CAEの分野で相対評価と絶対評価という言葉が用いられます。相対評価とは、比較対象が存在する2つ以上のサンプルのうち、どちらが優れているかを判断するもので、CAEでは簡単に結果を出すことができます。 絶対評価とは、比較対象なしで与えられた条件を満足できるかを保証するもので、実験データなどと整合させてさまざまなパラメータの値を調整する必要があります。 |
次に、3次元CADデータを利用した部品製造についての活用事例を紹介します。
「RP(ラピッドプロトタイピング)」とは、3次元CADによって設計したモデルデータから、金型などを製造せずに積層造形法(*1)などによって部品を簡易的に製造する技術です。
従来、複雑なデザイン面を持つ樹脂の試作部品は、機能やデザイン検証をするため簡易金型を製作して部品を制作していました。そのため、製作に2週間から1カ月もかかることが普通でした。ところが3次元CADのデータを利用することで、RPの装置さえ空いていれば、翌日には部品が出来上がります。
また、大物樹脂部品は長納期部品であったために、開発の短縮化の足かせになっていました。ところがRPの出現で大幅な時間短縮が可能となったため、製品開発の高速化に必須の技術であるといえます。
以上のように、代表的な3次元CADの有用な機能を紹介しました。3次元CADでモデリングするだけでは宝の持ち腐れです。機能を一通り把握することで、効率的に設計業務を進めることができるはずです。
「社内および社外での3次元CADの利用方法を現状確認して水平展開をすること」も大切です。ある設計部門ではこのような活用をしているのに、別の事業所の設計部門では行っていないというようなこともあります。さらにほかの企業では、もっと違った活用をしているかもしれません。
製品開発における3次元CADの活用方法については、各企業がWeb上で外部発表していることがありますので、良いところは取り入れるようにアンテナを高くしなければいけません。「ツールとして3次元CADをどのように使うか?」という視点で設計業務をすることが重要です。
◇
2次元CADや3次元CADを使って設計図(計画図)を描くことまでが設計の仕事と勘違いしていませんか? デキるエンジニアのCAD設計(1)の中で説明したように、設計部門のアウトプットは部品図です。
最終回は、詳細設計を終えて、設計者の意思を伝え、図面に命を吹き込むためのルールについて解説します。(次回に続く)
*1 積層造形法:平面な板状の形状データを縦に積み上げていくことにより造形するRPの製造手法。光造形やインクジェット法などがある。
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