電池などの直流電源によって回転する「DCモータ」。そのトルク(回転力)は、電機子と界磁磁石との間に生じます
【問題15】のようなマイコンのポートから模型用モータをON/OFFする回路で、抵抗RBの値を求める、という問題でした。
皆さん解けましたか?
解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。
それでは、解答を発表します!
トランジスタ・スイッチ回路の設計は、最初に制御対象物の電気的特性を調べることから始めます。
【問題15】のモータは模型店などでよく見掛ける通称マブチモータです。マブチモータは「DCモータ(直流モータ)」と呼ばれる種類のモータで、電池などの直流電源によって回転します。
図1にDCモータの内部構造を示します。
DCモータのトルク(回転力)は電機子と界磁磁石との間に生じます。電機子のコイルに電流が流れると磁力が生じ、界磁磁石となる永久磁石との間に吸引力・反発力が生まれ、電機子が回転します。コイルに生じる磁力は電流に比例するので、DCモータは入力電流に比例したトルクを生じます。
表1にマブチモータ「FA-130」の性能を示します。
表1のとおり、FA-130の消費電流は500mAなのでマイコンのポートから直接制御することは不可能です。そこで【問題15】では、パワートランジスタ 2SD560(画像1)を使ってモータを制御しています。
2SD560は低速度スイッチング用に開発されたパワートランジスタです。
FA-130の消費電流は500mAですが、起動時にはその数倍の電流が流れるので注意が必要です。表2に示すように、2SD560のコレクタ電流は5Aまで流すことができるのでFA-130の制御は十分可能です。
図2に2SD560の内部等価回路を示します。
2SD560はダーリントン・トランジスタと呼ばれるもので、図2のように2段のトランジスタが内蔵されています。このような内部構造を取ることで、1つのトランジスタでも電流増幅率hFEを大きくできます。
また、モータのようなコイルを制御するときには、サージ電圧への対策が必要です。
コイルに流れる電流を瞬時に止めるとコイルに“逆起電力”が生じます。この逆起電力を「サージ電圧」といいます。【問題15】で使用した2SD560には、サージ電圧からトランジスタを守るために逆方向のダイオードがあらかじめ内蔵されています。
それでは【問題15】を解いてみましょう。
最初にIBを求めます。
FA-130に流れる電流を1A(最大電流)、2SD560のhFEを5000とすると、
となり、IBは「0.2mA」と求められます。しかし、ここでのIBはトランジスタが開き切る境の電流値であるため、確実にトランジスタ・スイッチをONにするには不安です。そこで、今回はIBを数倍の1mAとしましょう。
それではRBを求めます。マイコンの信号電圧VINを5V、2SD560のVBEを1.5Vとすると、【問題14】と同様に、
となり、RBは「約3kΩ」と求められます。
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