卵子にDNA溶液を注入して人工細胞核を構築:医療技術ニュース
近畿大学は、精子の代わりに精製したDNA溶液をマウスの卵子に注入し、人工的な細胞核を作り出すことに成功した。作製した人工細胞核は、本物の核によく似た構造で、核と細胞質間の物質輸送能力を持つ。
近畿大学は2024年9月12日、精子の代わりに精製したDNA溶液をマウスの卵子に注入し、人工的な細胞核を作り出すことに成功したと発表した。作製した人工細胞核は、本物の核によく似た構造で、核と細胞質間の物質輸送能力を持つ。大阪大学、慶應義塾大学、東京工業大学との共同研究による成果だ。
研究グループはこれまでに、DNAを結合させた微小ビーズのDNAビーズをマウスの受精卵内に導入する手法で核様構造を再構築している。今回の研究では、DNAの量や長さ、注入タイミングなど細かい条件設定ができるように、DNA溶液を用いて核形成に必要な条件を検討した。
DNAビーズではなくDNA溶液を注入して検討したところ、DNAは長さ45.kbp(キロベースペア)以上、濃度100ng/μlなら卵子内で拡散せず、本物の核に酷似した形態を持つ核様構造を形成した。さらに卵子の細胞周期のうち、分裂終期を通過する条件でDNAを注入することも重要だと分かった。
マウス卵子内に注入したDNAはヌクレオソーム構造を形成しており、DNAの周囲には本物の核と酷似した核膜と核膜孔複合体が認められた。核膜孔複合体を構成するタンパク質のライブセルイメージングでは、DNA注入から時間が経過するとともにタンパク質を観察でき、核膜孔複合体を獲得する様子を確認した。
また、蛍光タンパク質を付加した核局在化シグナルを用いて、人工細胞核における物質輸送能力を評価したところ、蛍光タンパク質は人工細胞核に流入することが確認できた。この人工細胞核に核輸送阻害剤を添加すると蛍光タンパク質が流出し、さらに核輸送に関与する因子のタンパク質Ranが存在していた。このことから、核輸送能力を有する人工細胞核の構築に成功したことが示された。
今回の成果は、絶滅動物の復活や人工的な生命の創生などにつながることが期待される。
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